2000年代前半の三島由紀夫賞受賞作
あらすじ
サラリーマンを退職した賢司は古くからの友人である凌一と椿とカツオがやっているストロボラッシュという服のブランドを手伝うことになる。
マンションの一部屋で彼らの服の製作を手伝いながら、彼らがクラブで遊んだり、採算の取れない販売をしたりする狭間で少しずつズレを感じるようになり…という話
鈴木清剛さんの作品は初めて読んだ
文章が堅くなくて読みやすいけど
2000年代前半の空気感をちゃんと作品の中に落とし込んでいて
読み心地が良かったな
では具体的に良かったところを2つほど紹介
1つ目は
ミシンが作る服の数々
服のデザインをする話とかアパレル業界で働く人の話は読んだことある気がするけど服を実際に自分たちで作る人の話は読んだことなくて
ミシンで色々作れんの知ってびっくり
ジャケットとかもロックミシンってやつだと縫えるらしいし
ちゃんとしたブランドの服って今もミシンで作られたりしとるんかな
ミシンっていう近代的っぽいものを人類がそこまで発展させてきてたのってなんか良いよねって思う
今では服を量産するための機械ってミシンとは全く別の機械を工場で使ってると思うのだけど
今の発展した技術をミシンに惜しみなく注ぎ込んだらとんでもないものができたりするんじゃないかなって思った
2つ目は
価値観の違い
この作品でサラリーマンを退職した賢司とアパレルブランドを作った凌一たちが同じ時間を共有する日々を描いてるんですけど
最終的にやっぱり合わないところが出てくるんですね
それを読むと学歴とか職歴とかで差別はするべきじゃないけどやっぱり付き合う人って似たような境遇の人が多くなるから価値観ってどうしても変わってくるよなって思った
地元の同窓会に参加しても普段周りと話してるときと話題も価値観も何もかもが違って
違和感を抱くばかりで全く楽しくないみたいなあの感じを思い出してしまったな
誰も悪くないし切ないような気持ちになるけど
この気持ちってどう向き合うのが1番良いのかってなかなか難しいよなあ
なんかな完全に合わない人でしたって結論づけられれば楽なんだけどそれはそれで寂しいんだよね
難しいな
最終的に青春の終わりみたいな感じで
ハッピーエンドみたいな雰囲気で書かれてるんですけど
一定の距離感を保つことが決定して
近い距離では生きていけないことが明確化された気がしてちょっと寂しさを感じる最後だったな
話は読みやすくて良かったんですけどね