書店員の筆者による私小説
あらすじ
夫と別居することになった書店員の菜々子。気分転換も兼ねてXという出会い系サイトに登録し、初対面の人に本を薦める活動を始める。
身体目当ての人に当たったり、サイトについて教えてくれる人と出会ったり、友達になれそうな女の子と出会ったり、妄想の小説を送ってくる人と会ったり…さまざまな経験を通して成長していく…という話
本作は、筆者がヴィレッジヴァンガードの店長をしていたときの実体験をもとに書かれた話で
本が大好きな筆者が出会い系サイトで色んな人に本を薦めるというタイトルのままの話なんですけど
とても読みやすくて
小説とエッセイの間みたいな感じでスラスラ読めましたね
読書感想文だけひたすら書いていくのとは違って一人ひとりに合った本をセレクトするのは面白そうではあるけど大変そうだなって思いましたね
特に好きだったポイントを2つほど
まず1つ目は書き方
筆者は色んな本を読んでいるから技巧的な書き方も色々知ってはいると思うし、もっと小説っぽい書き方もできるとは思うんですけど
本書のようにあくまでも実際に起こったことをそのまま書いて表現技法みたいなので装飾しすぎないことで
話したいことがすんなりと入ってきますね
小説を読んでいる感覚というよりも話を聞いているみたいな感覚に近く読めて
筆者が経験したことがその経験だけまっすぐに伝わってきてとても好感
筆者の価値観も不器用でも誠実なものに惹かれる傾向があるように感じたので自分が書く文章も誠実でありたいと思ったのかなって思いますね
2つ目は、紹介する本のジャンルの広さ
小説といってもジャンルだけが幅広いわけではなくて海外の作家さんの、しかもあまり知られていない作家さんの本を薦めることもあれば
エッセイであったり、教養書みたいなものであったりというのを薦めることもあって
単純にすごい
特定の本じゃなくて本全体が好きなのが伝わってくるし、それぞれがどういう理由で薦めたのかを端的にまとめて書いていて
しかもその紹介文がとても魅力的だから
気になる本がいっぱいあった
小説のジャンルはあんまり偏らないようにしていると自分では思っていたけどこれを読むとまだまだジャンルの幅が狭いんやなって思いましたね
もっと色んな本を読まねば