『ミシンと金魚』の作者による第二作目
あらすじ
横浜の街に住む小学生のアキラは母親のカズ子と二人で住んでいるが、家には母親の恋人である日出男が仕事もせずに入り浸っていた。アキラは日出男に連れまわされる日常でもっと打ち解けたいと思うのにどこか気を遣ってしまう。アキラは友人のモリシゲと一緒に遊んだり、犬のヤマトとじゃれ合ったりして夏休みを謳歌するが、ある日川の漂流物を見てみると、それは人体の一部で…という話
正直この話要素が多すぎてあらすじ書くの無理だ
あんまり書ききれなかった辺りは下で触れるとして
まず第一にこの話を読んで永井みみさんがよくわからなくなった
幅が広いというか『ミシンと金魚』といろいろと違いすぎて同じ人が書いた話っていう印象が全くしなかった
今作の主人公が小学生の男の子で完全に小学生になりきって書いてるから
価値観が前作と重複するところがなくてとても新鮮だった
前作よりも読みづらい気がしたのはたぶん今作のほうが書こうとしていることの量が多いから読んでいて上手く整理がつかなかったっていうのと
主人公の立場に立つといろいろ上手く整理させたくなかったっていうのもあるのかな
って思いましたね
色んな要素が絡み合っていて面白かったのは確か
では具体的に良かったところを3つほど紹介
まず一つ目は
日出男の人間性
母親の愛人という立場だし、仕事はしてないし、世間一般でいうと全く立派な人間ではないんだろうけど日出男の人間性には惹かれた
アキラをバーに連れて行って酒を移し替える自由さと母親に新しい男の影が見えると行方をくらませる漢気みたいなものとアキラがほしかったおもちゃを買っておいてあげる優しさを兼ね備えてるのに
仕事には不向きっていう特徴もあって人間性の魅力が詰まってる人物だなって思いましたね
このあたりの人物の魅力っていうのも小学生の視点から書かれているとより良い感じがしますよね
2つ目は
ジョニ黒に準えているいくつかのこと
ジョニ黒っていうのが本作の中では高い酒に見せている安い酒?みたいな意味なのかな
まあ見た目と中身が違って不完全なものっていうイメージみたいなんですけど
ジョニ黒が父親がいないアキラの家とかアキラ自身のこととかモリシゲのこととか流産した犬の子どもとかの不完全性や逸脱の象徴みたいに思えて
タイトルに込められた意味と内容のリンク具合が好きだった
あと犬を妊娠させて稼ぐ発想がわかりやすい日出男っぽさを表していて良かった
3つ目は
風俗店で働く女の影
これが本当によくわからない
風俗店で働く女が今作の最初に出てきてそのあと全く出てこなくなったと思ったら突然現れるから
小学生から見た大人の世界の訳わかんなさを表してるのか病んでる人の朧げさみたいなものを感じ取ったと勝手に解釈してみると良いのかな
って思ったな
全然違う意味で読み飛ばしてただけだったら嫌だなあ
いやあ捉えどころない感じはあるんだけど
面白く読めたな
永井みみさんがどういう作品書いていくのか楽しみになった