すばる文学賞受賞作
あらすじ
主人公のカケイはボケていて、ヘルパーさんを全員みっちゃんと呼び、息子の嫁が家に来る日を恐れ、デイサービスで米山さんや兄貴の女だった広瀬のばーさんたちと遊ぶ日常を送る。カケイはミシンで稼いできた人生や道子と金魚のことなどを回想していく…という話
あらすじあんまり面白くなさそうなんですけど
正直色んな意味で凄すぎてびっくりした
こんな小説が成立するのかと思う衝撃
筆者の経歴見てケアマネジャーをしていたっていうことで少し納得
でもやっぱりすごい
具体的に良かったところを3つほど
まず1つ目はボケているカケイ視点での描写
これがとにかくすごい
主人公視点の書き方をしている小説ってある程度主人公が理性的でないといけないような気がしていたんですけど
この本の主人公がボケているから
人の区別がつかなかったり、人が亡くなっていることを忘れていたりしているのが
文章で説明なくそのまま書かれていて
読者がボケた人物に入り込む構造になっているので
ボケている人がとる突飛な言動を理解できる
これを読むと人に優しくなれそうですね
2つ目はカケイの人生のキーワードとタイトル
タイトルと本の内容のバランスがとても良い
カケイの人生を支えてくれた仕事のキーワードであるミシンと
カケイの人生での深い後悔を連想させる金魚
カケイの人生の構成要素として大きな意味合いをもっている2つを並列したタイトルを
カケイの人生を描く小説につけているのが良い
それにこのミシンと金魚というのは
カケイが後悔している場面においても対比っぽくなっていて
それも良いですね
3つ目は登場人物たちの人生
この小説の登場人物はみんな生き生きとしていて
特に老人ホームの人たちがちゃんとそれまで人生を歩んできて
そしてここに来ているというのがとても強く伝わる
小説の筋に必要不可欠ではない人物まで詳細に書かれているから現実感が強いし
それと同時に喪失感を大きい
めっちゃ泣いた
この小説を読むと介護や歳を重ねた人たちへの考え方が変わりますね
自分が介護に関わるようになるときにもう一度読みたいな