三島由紀夫賞受賞作
あらすじ
背中にたてがみの生えた中学生の獅見朋成雄は陸上でオリンピックを目指せるほどの身体能力の持ち主だったが、山に住むモヒ寛という書道家に弟子入りし、書の道を志す。ある日獅見朋成雄はモヒ寛が山で鈍器で殴られたような大怪我をしているところを見つけ、モヒ寛は入院することとなる。モヒ寛不在のなかモヒ寛の家に忍びこむ怪しい3人組がやってきて、獅見朋成雄は彼らを追い、現実離れした集落に辿り着き…という話
舞城王太郎さんの作品はファンタジーなんだけど読んでいくと象徴的なことが書かれているように感じて読み終わってからどういう意味だったのか考えさせられる時間が長くてとても良い
道徳・倫理的に非難されそうなこと書いてるのに騒がれないのって本の良さですよね
では具体的て良かったところを2つほど紹介
1つ目は、自分の変容と幅
獅見朋成雄は途中で自分の個性だと思ってたたてがみを失い、人としての道を外れる
そのことで自分に対して違和感を抱くんですけど
周りの態度も最終的な自分の行動の方向性も元のままに収束するような展開になっていて
それが紆余曲折ある人生のなかで自分が変容していく様子を表しているように思えた
自分らしさって自分で決めたり、自覚したりするものじゃなくて勝手に自分のなかに染みついてるもので
良くも悪くも自分でもがいても結局自分らしさの幅のなかに収まるのかなって思うな
2つ目は、人間性の逸脱
話の途中で殺人やカニバリズムが出てくるんですけど
それらの行為によって人間性を逸脱して
他者から見たら感覚が麻痺してる部分はすぐにわかるけど自分からしたら違和感はあってもどこが麻痺してるかはわからない感じが良かったな
獅見朋成雄の場合はモヒ寛っていう信頼できる大人が近くにいてその人と喋り続けられる関係性があったからある程度の人間性を保ち続けられているんかなって思うと
やっぱり信頼できる客観視の視点を与えてくれる人間関係って重要だよなって思いますね
舞城王太郎さんの作品半分くらい読んだんかな
長めの作品も読んでいきたいな