芥川賞候補作
あらすじ
ある日精神が不安定な父親と2人暮らしだったせれなのもとにベラさんという女性がやってきて新しい母親となる。父とベラさんはともに働いて頑張っていたが、やがて仲は険悪となり、ベラさんは家を出ていく。ベラさんがいなくなると父親はせれなを性の対象として見るようになり、リアンに助けを求めるようになり…という話
久しぶりに書くとやっぱりあらすじ下手になるな
ってのはまあ良いとして
死んだロックスターと交流するっていうのと表紙の棺のイメージから勝手にファンタジックでRPGっぽい軽さを含んだ小説だと思ってたんですけど全然違いましたね
結構重めな小説でそれを重い感じ全開に書くわけではないのがとても良かったですね
では具体的に良かったところを2点ほど紹介
まず1つ目は何と言っても
メタ視点のない現実逃避
主人公のせれなが現実を見たくなくてはリアンに縋る様子が全体を通して描かれているんですけどその様子がせれな視点しか描かれていないことで本当にずっとリアンは存在しているように描かれていてせれなが周りからどう思われているとかっていう情報が一切書かれてないのがとても良い
現実逃避が切実なもので
周りからどう思われてるとか関係なくて
異質なものでもないことが主張されているから
本当に追い詰められてる人に寄り添ってくれているみたいで良かった
2つ目は現実の薄さ
1つ目と近いんですけど
せれなが現実でどういう生活してんのかが全然わからない
いつの間にか歳を取ってたし、いつの間にか仕事してた
人生が連続的でその間ずっとせれなが変わらない様子が描かれてんのがとても良い
そして父親がどうなったかはわからないまま
性被害の影響がずっと出てるのがリアルだよなって思いますね
いやー書き方で好きな小説久しぶりに出会った気がしますね
2作品目ないのかなー