あらすじ
京都の狸一家である下鴨家の三男である矢三郎は日々人間に化け、赤玉先生という天狗を師として仰いだり、蛙になった矢二郎に会いに行ったり、敵対する夷川家と戦ったりして過ごす。そんななか、狸のリーダーである偽右衛門を決めるなかで父が金曜倶楽部に狸鍋にされた背景がわかってきて…という話
森見登美彦さんらしい雰囲気ではあるんですけどちょっと他の作品とは違うところが所々あって結構楽しめた
面白かったところを3つほど
1つ目は父の死について
これが他の作品ではあんまりない要素である気がしていて
森見登美彦さんの作品でこれほどはっきり死について書かれているものはこれまで読んだことがなくて
しかもそれが鍋にされて食われたっていう想像したらだいぶグロい死に方で
しかもそのときに父を食べた弁天と仲良くしていて
っていう主人公が人間ではありえない複雑な関係を築いているのが面白い
森見登美彦さんにしか描けない世界観な気がしますね
2つ目は海星というキャラクター
海星は下鴨家と敵対する夷川家の人間だけど矢三郎に情報を与えてくれる存在で
でも姿を見せることはなくて
声だけ聞こえるっていう存在なのが面白い
どっちの家にも付いていない中立的な立場っていうのがハッキリわかっていい空気を醸し出していますね
3つ目は狸、人間、天狗の関係性について
狸は人間に弱くて天狗に強くて
人間は天狗に弱くて狸に強くて
天狗は狸に弱くて人間に強い
って何となくの関係性がある気がして
その関係性を基本として物語が進むから物語が入ってきやすくて
最後の展開もスッと入ってきやすかった
そもそも天狗とか狸が人間と普通に関わりを築いているのが森見登美彦さんにしか描けない気はするけど
その関係性を必ずしも上下関係にし切らないのがらしいし良いよなって思います
やっぱ人気の作品は面白いんだなって改めて思いますね