芥川賞候補作
あらすじ
台湾人の母と日本人の父をもつ琴子、台湾人の父と日本人の母をもつ玲玲、両親が中国人であるが日本育ちの龍舜哉。3人は中国語を勉強するために中国に留学し出会った。それぞれの立場で中国という文化と中国語と向き合いながら彼らは青春のひと時を共有する…という話
中国・台湾出身の作家さんだと李琴峰さんしか読んでなかったから
堅い雰囲気で読みづらさあるかと思ってたけど
めちゃくちゃ読みやすかった
李琴峰さんは李琴峰さんでいいんですけどね
日本語が母国語でない方が書く小説というイメージが固定化されないっていうのは良かった
では具体的に2つほど良かったところを紹介
1つ目は父国語という考え方
この話に出てくる主な登場人物たちはそれぞれの立場で中国語に向き合う
各々が母国語ではないけど縁のある言語に立ち向かう様子が描かれているのが魅力
特に主人公は父親の言語である日本語しか知らなかったから母国語という概念を知らない感覚にあって
父国語である日本語と母国語である中国語を知りたいって思っているっていうのが
なかなかそういう立場にないと想像できない感覚だからその感覚をこの作品を通して擬似体験できるのは面白かった
2つ目は青春の描き方
この話の中の琴子、玲玲、舜哉の言語や人種とかと無関係に築かれる人間関係って真っ直ぐだけどちょっと入り組んでしまうことにはなるんですけど
それが大きいこととして書かれてないのがなんか良かったかなって思います
簡単に言うと恋愛の三角関係になるということで
それが将来の関係に全く影響を与えていない様子も描かれているんですけど
もともと人間関係をめっちゃ気にする立場からしたらこういう昔のことをあんな過去もあったねって笑い合う感じなの好きじゃなかったんですよね
でも
若さ+わずかな逸脱=青春
とするならこの辺りの描写はまさしく青春の芯を捉えてると思うし
最近ちょっと過去の誤ちを自分と関係ないことのように思えてしまう感覚も分かってきたから
三角関係に対する書き方のクールさが良いのかなって思った
自分の成長を感じたな
最後にこの作品の
台湾は中国と日本のどちらでもないのではなくてどちらでもあるという一貫した考え方も好きだったと言う感想を添えて終わり