2023年の三島由紀夫賞受賞者である朝比奈秋さんのデビュー作
あらすじ
悪性腫瘍の摘出手術で肛門と腸を切断し、人工肛門をつけることになった女子大生の涼子。涼子はレストランでウェイターとしてバイトしていたが、人工肛門のことが気になってしまい、就活中だと言ってバイトを休む。ある時、彼女は同じく人工肛門である京平と出会い、親交を深めていき…という話
現役の医師で三島由紀夫賞を受賞された朝比奈秋さんの作品で
朝比奈秋さんの作品自体初めて読んだんですけど
独特?なのか心情が読み取れないところが結構あって読みやすくはなかった
『塩の道』は特によくわからなかったので感想とか言えない…
ただ疾患や身体の変化に向き合う様子はとても楽しめた
では具体的に良かったところを2つほど紹介
まず1つ目は
人工肛門というものにまつわるあれこれ
初めて人工肛門というものを知って
多目的トイレにある手洗い場と便座の間みたいなやつの使い方めっちゃ納得やった
それと自分の腸の一部を外側に出して一時的な排泄器官にするって嘘みたいな話だなって思った
人間の構造的に外の空気に直接腸を出していて良いもんだと思ってなかったので
具体的に想像はできないけどそういう人もいることを知ってるのと知らないので大きく差ができそうな場ってありそうですね
読書の1番の醍醐味が自分の他者への共感の総量を増やすことができると思うんですけど
その醍醐味を味わえる作品だったなって思います
2つ目は
欲求の権化みたいな職場
主人公が働いてる職場が本当に品を感じられなくて欲望のままに動いてる人間たちが多いのが
色んな記憶呼び起こしてくれて
心地よく不快だった
女子高生のバイトに対する態度もペースメーカーの入った人に対する態度も理性を感じなくて
同窓会思い出したわ
世界全体においてこういう場ってすごく多いと思うけど今あまり縁のない場だから
本を通してその感覚を新鮮に感じられるのはなんか良かったな
感覚を保存してくれているような気がしますね
あまりストレートな楽しみ方はしてないと思うけどこの人の切り口の面白さはわかった気がする
『植物少女』気になる