2023年本屋大賞受賞作
あらすじ
舞台は瀬戸内海のとある島。父が愛人の元に行って帰って来なくなったことで精神を病んだ母と住む暁海は、京都から引っ越してきた、色んな男についていっては捨てられる母をもつ櫂に心惹かれ、付き合い始める。しかし高校卒業後、櫂は漫画家になるために上京をする一方で暁海は母のことが心配で島に残ることとなる。櫂は漫画家として成功していくものの、2人の距離は離れていき…という話
凪良ゆうさん2度目の本屋大賞すごいよな
この作品も色々な賞獲ってて気になったんで読んだんですけど前半は話が重すぎてキツかった
全体を読み終えるととても良かったんですけど
ちょっとこれが本屋大賞受賞で色んな賞獲ってるのってさすがに世の中の暗さを感じざるを得ない感じがあって明るい気持ちにはなれなかったな
それでもこの作品が色んな人の救いになることは確かだろうし得られるものも多い作品でしたね
ということで良かったところを4つほど紹介
まず1つ目は、周りから見えない闇
この作品でとても好きだったのが暁海と櫂の家族の内実で
暁海は父と母がいて2人から直接暴力を受けたり、罵声を浴びたりは一切してない
でも母の様々な言動が暁海の心を摩耗しているのは事実
同様に櫂についても同じく、暴力を振るわれるどころか母からは信頼されている
でも母はまともに櫂のことを見ていないし、母を支えなければならない役割を担っている
その結果アルコールに逃げている
っていうことがあって
たぶん2人とも周りから見たらちゃんとした家族のように見えるだろうし、愚痴とかも言いづらいくらいの立場に追いやられてる気がする
その2人を主人公にもってきてその心の内側を描いているのがとても好きだった
2つ目は、尚人の存在
櫂とともに漫画を描いてる尚人という登場人物がいて
尚人はゲイであることから色々と巻き込まれてしまうんですけど
その後からの尚人の心の精密度がとても高い気がした
実際のことがわからないからあれだけど
尚人の言動すべてが納得できたし
この尚人という存在で物語の厚みがすごく増してる気がした
3つ目は、人間のつながりの多様化
この作品では母と子の関係が上手くいっていないことが書かれる以外に父の不倫相手の瞳子さんと暁海の師弟関係だったり、櫂と編集者の浮気の関係だったり、先生と生徒の恋愛関係だったり
っていう色んな人間関係が書かれているんですけど
そのどれもが固定観念のポジティブ・ネガティブの感覚と全然違うような書かれ方をしてる
暁海からしたら瞳子さんは父の不倫相手だからネガティブな関係性のようだけど実際には色々と良い効果が生まれているとか
自分のなかで不倫とか浮気に対しての嫌悪感みたいなものがもともとあったんですけど
これを読んで最後の関係性否定するべきじゃないなって思って
何にでも例外ってあるもんやなあって思った
とにかく赤の他人が他の人間関係どう思っても良いけどその行為って馬鹿馬鹿しい行為だなっていうのは確かなものとしてこの作品から受け取った
4つ目は、エピローグとプロローグの関連性
この作品の最初プロローグを読んだ時関係性がめちゃくちゃですごい嫌だったんですけど
最後のエピローグまで読んでプロローグに戻ったら印象が全く違っておもしろかった
自分が色んな固定観念に雁字搦めにされて生きてるんやなって思いましたね
ちょっと反省したな
この作品って本屋大賞の割には賛否分かれそうだなって印象を受けましたね
『流浪の月』がすごく好きだったから『汝、星のごとく』はそれを超えるほどではないにしてもとても面白かったですね
最初のプロローグからもうすごい嫌な感じがあったんですけど