今年も本いっぱい読んで
感想投稿してるのが100冊ちょっとで
読んだのは200冊ちょっとくらいなんですけど
今年も面白い小説にいっぱい出会えた
でも面白いっていう感情を分解すると共感性とか趣味趣向、未体験さとか結構主観によるところが多くて
話そのものの良さって一部だし、個人に判断できるものじゃないので
いっそのこと主観だけで30冊選んだ
(このブログ3ヶ月くらいラグあるので感想投稿してないやつ多数謝謝)
一応
好み度、物語の内容、物語の独特さを10段階で書いてるんですけど
合計点とかでランキングつけるわけじゃなくてとにかく読んで良かったっていう気持ちだけで順位をつけているのであくまでも参考程度に
好み度…とにかく自分が共感できる、自分的にとにかく好きだという度合い
(自分個人がとにかく好きなほど点高い)
物語の内容…話の分かりやすい展開とか登場人物の分かりやすい魅力とか
(読む人を選ばなさそうなほど点高い)
物語の独特さ…話のテーマとか文体とか構成とか
(こんな物語読んだことないってやつほど点高い)
ではランキング
第30位 世界の果ての子どもたち / 中脇初枝
好み度 5
物語の内容 8
物語の独特さ 6
戦争の理不尽さや人の繋がりの尊さが詰め込まれた作品
戦時中の土地にタイムスリップしている感覚になる
泣いた
第29位 オテル モル / 栗田有起
好み度 7
物語の内容 6
物語の独特さ 7
姉の子どもと元彼で姉の夫と住む主人公が眠りを追求したホテルで働く話
登場人物が話の構成要素として機能していて心情が掴みにくい
だからこそ妹が姉を思う気持ちが切迫してきた
第28位 貝に続く場所にて / 石沢麻衣
好み度 6
物語の内容 6
物語の独特さ 9
ドイツの地で時空間を超えた邂逅を果たす喪失と所持物の話
どちらかというと保守的で美しい文体なのに内容がとてもファンタジー
絵画のような芸術性で悲哀を描いている、とにかく綺麗
好み度 8
物語の内容 6
物語の独特さ 7
すっぽん捕まえて一攫千金を狙う話
社会から一時的に距離を取る二人の男女の馬鹿馬鹿しい話
表題作は50ページ程度で読みやすくてとにかく好き
第26位 ハーモニー / 伊藤計劃
好み度 5
物語の内容 7
物語の独特さ 7
均質化した世界で人が繋がり、崩壊する話
SFに慣れてない分、あまり読み取れてない気がする
だけど人間の内部が公に支配された世界の悲劇がとても苦しく胸に残った
第25位 王とサーカス / 米澤穂信
好み度 6
物語の内容 8
物語の独特さ 7
タイで仕組まれた殺人事件に向かう記者を通したメディアのあり方についての話
最後の最後まで真実が隠されている
出てくる登場人物それぞれの汚い部分が描かれていてタイという国のリアルを感じることができる
あくまでもリアルっぽいものかもしれんけど
第24位 彼岸花が咲く島 / 李琴峰
好み度 6
物語の内容 7
物語の独特さ 9
女だけが権力を持ち、独自の言葉を使うことが許される島の話
アニメ映画のようなファンタジーと魅力的な登場人物が特徴的な話
かと思えば、島の歴史に残酷な過去があるという構造が凄い
第23位 旅する練習 / 乗代雄介
好み度 7
物語の内容 7
物語の独特さ 8
コロナ禍でサッカー少女と小説家の叔父が利根川沿いを歩く話
小説家の叔父視点で描かれる小学生の亜美の魅力がとにかく良い
河川沿いの自然を飽きずに描き続ける筆者の力がすごい
第22位 水滴 / 目取真俊
好み度 6
物語の内容 7
物語の独特さ 9
戦争で生き残った元日本兵の足からあふれた水を戦死した仲間が夜な夜な飲みに来る話
今から20年以上前の芥川賞受賞作なのにとても読みやすくてファンタジックで面白かった
戦争に参加した人間の後ろめたさを追体験できて新鮮だった
第21位 蔭の棲みか / 玄月
好み度 6
物語の内容 6
物語の独特さ 9
戦後不法地帯の朝鮮人の集落で生きてきた老人の生き様の話
芥川賞受賞作の「蔭の棲みか」、芥川賞候補作の「おっぱい」、小谷剛文学賞受賞作の「舞台役者の孤独」の3作品が収録されていてどれも面白かった
表題作は日本兵として戦争に参戦した朝鮮人の後ろめたさや無力感が日常に編み込まれていて良かった
第20位 ブラックボックス / 砂川文次
好み度 7
物語の内容 9
物語の独特さ 8
自転車で配達員をする男のある事件以前以後の話
中身が何か入っているかわからないブラックボックスを人の心と街並みになぞらえて描いた構造が素敵な作品だった
前半と後半で時間の流れも状況も一気に変わる面白さもあった
第19位 おいしいごはんが食べられますように / 高瀬隼子
好み度 9
物語の内容 7
物語の独特さ 5
弱い同僚にいたずらをする男女の話
現代社会のわかりやすい弱さを守って、周りの空気は壊さないように同調して
という価値観をぶち壊そうとしているような作品で
ごはんを悪として書いてる部分がある感じが自分にとても合っていて好きだった
第18位 アウア・エイジ / 岡本学
好み度 9
物語の内容 8
物語の独特さ 7
昔映画館で一緒に働いていた女の持っていた鉄塔の写真の真相に迫る話
頭の中のイメージがずっとモノクロになるような雰囲気が良かった
人と人の距離感が程よくて、その人間性の淡さが味わい深い
教養としての数学が好きな人はさらに楽しめるんだろうなって思った
第17位 聖水 / 青来有一
好み度 6
物語の内容 8
物語の独特さ 6
父の死の間際、父のいとこが聖水という水を高く売り、教祖化している話
芥川賞受賞作の「聖水」、芥川賞候補作の「ジェロニモの十字架」、「泥海の兄弟」、「信長の守護神」の4作品収録という豪華な一冊
どれもとても面白かった、でも表題作が個人的には一番あんまりだったからまとめるのが下手
長崎や九州の土着性を物語に惜しみなく昇華しているのが素敵だった
第16位 掏摸 / 中村文則
好み度 8
物語の内容 7
物語の独特さ 7
生きるために掏摸をするしかなかった少年の話
裏社会の怖さとどん底にいる人間の人間愛が描かれていてこれまで読んできた中村文則さんの作品を凝縮しているような作品に感じた
続編?の「王国」も読むとちょっと救いを得られるところがあってとてもよかった
暗さのなかに優しさが微かに混ざっているものに惹かれる
第15位 私の男 / 桜庭一樹
好み度 10
物語の内容 8
物語の独特さ 8
暗い過去を抱える叔父と娘が互いを求めあう話
過去にしか進まない構成が好き
性愛の心地よい気持ち悪さがクセになった
腐った花という雰囲気を全体で醸し出してる
繰り返し読みたい
第14位 ひとり日和 / 青山七恵
好み度 9
物語の内容 5
物語の独特さ 4
他人のおばあさんの家に住んで成長していく女の子の話
っていっても主人公20歳とかだった気がするけど
この作品は時間軸の使い方にとても驚かされた
人生の一時期を描いていて、記憶の脆さみたいな雰囲気も感じさせるような
黄昏を感じさせる雰囲気が好きだった
第13位 熱帯 / 森見登美彦
好み度 6
物語の内容 8
物語の独特さ 10
誰も最後まで読んだことのない熱帯という本を巡る話
構成だけだと今年一番衝撃だったかもしれない
前半と後半が本の外側と内側みたいになっているような構成なのに
両方を人物が行き来している感じもあって
訳わかんなかったのに面白かったし、本として成立していて
なんかすごかったというのが限界だ
第12位 幼な子の聖戦 / 木村友祐
好み度 9
物語の内容 7
物語の独特さ 8
元同級生が村長になることを応援したいのに妨害しないといけない男の話
芥川賞候補作の「幼な子の聖戦」と「天空の絵描きたち」が収録されていて、
自分的には高層ビルの清掃員を描いた「天空の絵描きたち」がとにかく良かった
1つのテーマ、この本だと選挙と高層ビルの清掃員というそれぞれのテーマに興味をもってしまう作品の魅力にやられた
自分の視野を広げてくれる作家さんだ
第11位 熱源 / 川越宗一
好み度 7
物語の内容 10
物語の独特さ 8
アイヌの男たちの生涯の作品
この作品はとにかく熱い展開が多い
歴史物をほぼ読まないし、北海道との接点皆無なのにこんなに読むのをやめられなくなるのかというくらい読んでいる間の楽しさがすごい
評価されている歴史物は読んでみたいと思えるようになった
第10位 ドール / 山下紘加
好み度 9
物語の内容 8
物語の独特さ 8
ラブドールに依存していく男子中学生の話
今年芥川賞候補作になった「あくてえ」の山下紘加さんの文藝賞受賞作なんですけど、これがめちゃくちゃ面白い
ラブドールに主人公が色々と吸われていってしまっていく恐ろしさが全面に出ているのにわざとらしさがなくてとても良い
第9位 ひらいて / 綿矢りさ
好み度 9
物語の内容 7
物語の独特さ 5
気になった男の子と手紙を送りあう女の子に近づく女子高生の話
これ物語の独特さを5にしたのはよくあるような話だと思ったからなんですけど
でもこの順位にしてるし、面白かったし、正直何が自分に刺さっているのかあまり言語化できていない
唯一言えることは主人公の心理描写がとにかく丁寧で繊細で綺麗
たぶんその辺りに惹かれたんだと思います
他の小説では抜け落ちている何かがこの小説には掬い取られている、、、はず
第8位 黒冷水 / 羽田圭介
好み度 7
物語の内容 9
物語の独特さ 9
兄の部屋に侵入する弟と弟を懲らしめる兄の話
まず物語の内容の充実度がとても高い
このテーマで書くなら起こりうることは全部書き出してさらにそこに様々な要素を加えて、でも不自然にならないように描かれているような作品
最後の辺りの弟の様子の変化と兄の対応が展開として面白かった
好み度 9
物語の内容 6
物語の独特さ 9
資料館で資料の整理をし、クイズを出す仕事をする女性の家に宮古馬が迷い込んでくる話
この話もとにかく独特
というか、現実ではあと一歩のとこで起こりそうにないファンタジーが多く詰め込まれていて
その空気感にハマる
主人公の女性が深く人と関わる描写は少なくて一人の人間の人生に焦点が当てられているから情報量が多くても雑多な感じはなくて、すべての要素が一つの世界を作り上げている
特にクイズを出す辺りがとても好き
第6位 日曜日の人々 / 高橋弘希
好み度 10
物語の内容 8
物語の独特さ 8
社会の中心では生きていけない何かを抱えた人たちの集まりの話
まず初めに自傷行為と自殺行為みたいなのが多く出てくるから元気な時に読むこと推奨
この話は社会から除け者にされてたり、馴染めなかったりする人が出てきて
でも彼らにも温かいところはあって
それでも人生は簡単にはいかなくてっていう状況が
詳細に描かれていて読んでて胸が苦しくなる
だけどとても救われる
今年読んだ本のなかで一番読み返したいし、読み返すことになると思う本
第5位 ビッチマグネット / 舞城王太郎
好み度 10
物語の内容 5
物語の独特さ 9
ビッチの女の子を引き寄せる弟を心配する姉の話
この話は人によっては何も響かないだろうなとは思う
でも自分にはとても響いたし、この本もまた救いになる本
舞城王太郎さんの本の主人公は言ってることとやってることにギャップがあることが多くて行間を読むことを楽しむことができるんですけど
この本の主人公が自分と重なるところが多くて
物語の登場人物史上一番共感できたし、それがなんか嬉しかった
あとそれとは別に正論についての意見が好きだった
第4位 教育 / 遠野遥
好み度 10
物語の内容 8
物語の独特さ 10
外の世界とは隔絶された施設で教育を受ける学生たちの話
これはめちゃくちゃ面白い
すべてがファンタジーで現代の教育を皮肉っているんですけど
人物たちがシステムのなすがままになっている様子はもちろん
この小説の中で出てくる色んな話もまた面白かった
遠野遥さんの「改良」と「破局」と大きく異なった小説だし
作家さんとしての幅の広さも感じた
物語の独特さ10とは書いてるけど性に関することがとにかく苦手って人じゃなければ誰でも面白く読めるんじゃないかなあ
好み度 9
物語の内容 10
物語の独特さ 5
高校時代に自殺した親友の彼女と邂逅を果たし、惹かれ合うも、愛し合うことが困難である男女の話
こんな小説があるのかって思った
物語の展開と構成でこれを越えるものに今後出会える気がしない
俺だって認めたくなかったよって言いたい
言ってしまうと村上春樹さんの他の小説があんまりしっくり来てないし
でもこれは本当に一人の人と一人の人の愛を極限まで追求して書かれたとてつもない作品だと思う
喜怒哀楽の喜怒楽をなくす読後感
良かった
第2位 ミシンと金魚 / 永井みみ
好み度 10
物語の内容 8
物語の独特さ 10
老人ホームに通うボケた老女の話
この一年で一番衝撃を受けた本
ボケた人間の視点で破綻のない小説が出来上がることに衝撃
しかもその人の視点だから隠されているはずのないところが隠されていたり、
登場人物が何人も同じ名前だったり
常識を覆すような小説
主人公の人間性がここまでわかる描写もすごいしとにかく感動するし
この本のエネルギーはすごい
第1位 生のみ生のままで / 綿矢りさ
好み度 10
物語の内容 9
物語の独特さ 5
お互いの彼氏を通じて知り合った二人の女性が立場の違いを越えて愛し合う話
まず言い訳なんですけど俺だって同じ作家さんの本2冊選ぶつもりはなかったと言いたい
「ひらいて」を上半期に読んでてこれが綿矢りささんの小説で一番好きだと思ってたら越えてくんだから
しょうがない
で、点数の通り特別凝った文体とか構成とかって感じはしないし、読みやすいんですけど
ここまで純度の高い同性愛の話って読んだことなくて
同性愛を書く小説だと説明的になりすぎたり、どうしてもちょっと浮いてて苦しい感じを話に入れたりしているものが多いと思うんですけど
この話で描かれている苦しさの部分ってお互いに会えない部分だけで
2人の中で愛を越えるものが何一つ出てきてないのがとても美しかった
そして他の立場からしたら、完全なハッピーエンドではないし、色々な問題もあるだろうけどそれを気にさせない終わり方で
とにかくハマった
読んでる時の感情の動き幅と読み進めたい思いと読んだ後に心に残った色んな感情や思考の質量とかを総計するとこれが一番だった
良かった
ということでね30冊紹介したんですけど
200冊くらい読んでると良かったって思う以外の感情もまあ巻き起こるわけで
少しだけ番外編として気になった本や作家さんについても紹介しますね
まず今年読んでやっばって思った本
1. 皆のあらばしり / 乗代雄介
「皆のあらばしり」という本が本当にあるものなのかを歴史的な観点から探る話
とにかく調べこみがエグい
歴史関係の知識がどれほどあればこの本をすんなり読めるんだって思った
栃木の歴史のどれが本当でどれが作り話で、どうやってこの話を成立させたんだ?って思った
2. ベルリンは晴れているか / 深緑野分
戦後のドイツでお世話になった人が毒殺された真相を探る話
ミステリーとしてだけでも面白いのに戦後の様子がリアルすぎる
人の想像力は時代も土地も超えるのかと思い知らされた
自分がもっと読むべきだと思った作家さん
読んだ本:「グランド・フィナーレ」、「インディヴィジュアル・プロジェクション」
話によって変幻自在になる
構成も話の内容も一つの作品に入れ込んでいるのに話のテーマが全く違う
底知れなさがあってもっと読みたい
読んだ本:「回遊人」、「ハリガネムシ」、「ボラード病」、「流卵」
目の付け所が独特
少し変わったタイトルと中身の空気感の独特さがクセになる
タイトルだけで面白そうな本がいっぱいあるから読みたい
今後の活躍が楽しみな作家さん
九段理江
読んだ本:「Schoolgirl」
話の作り方がとても上手
読みやすくて面白い、しかもちょっと教養のある作品が生まれそう
島口大樹
読んだ本:「オン・ザ・プラネット」
書く物語の視点が独特
色々な考え方をする方だと思うからどんな話も読んでて楽しいのは間違いないと思う
この2人は芥川賞取ってほしいなって思いますね
やば長い
終わり