芥川賞候補作
あらすじ
就職活動に失敗した一馬の元にフランスに住む姉から連絡が来る。姉の紹介で人気のレストランのキノコ係として雇われた一馬はマルコと呼ばれる高級なキノコを日本で探してくるように言われる。日本に帰国すると両親の仲が悪くなっていて父のもとを訪れるとそこには大きなキノコが生えていて…という話
この本を読んで教訓を答えよって言われても困るような本
ただただキノコについて考える機会を与えられた感じがある
栗田有起さんの読みやすい文体で物語を楽しむのがメインっていう小説だなって思う
家庭環境が複雑だった『お縫い子テルミー』と『オテル モル』の方が自分的には好みだったけどこの小説も面白いことには違いない
では具体的に良かったところを2つほど紹介
1つ目は、
キノコという概念
この話で出てくるマルコはキノコという概念そのものみたいな扱われ方をしていて
建物に巣食って成長しているんですけど
キノコって見えるところは子実体で本質は糸みたいな菌だからキノコとキノコじゃないところの境界が曖昧っていう性質があって
あたり一帯を支配しているおぞましさみたいなのが表現されていてキノコの特徴捉えてるな
って感じがした
2つ目は、
一馬の状況とキノコの照らし合わせ
無理矢理なんかな
この話の主人公の一馬って就職活動に失敗してフランスで働いてたかと思えれば今度は日本に戻ってマルコのもとで暮らす様子っていうのが
キノコの胞子が浮遊して土地に土着する感じと似てるな
って
与えられた場所で咲くじゃないけど人が生活を送れる場所ってある程度決められてるようなことを考えた
直感的にだけどここでは生活できるけどここでは生活できないみたいなのが本能に埋め込まれているんだとしたら
自分が自由に選んでると思ってる住所とか職業とかって決して無限の選択肢から選んでるわけではなくて思ってるよりずっと少ない選択肢から選んでるもんなのかな
って思ったりしてみた
本当に教訓はない
けど小説に教訓はいらないとも思う
昼休みに読むのにちょうど良い小説やった