尾崎世界観さんの作家デビュー作
尾崎世界観さんの本はエッセイは読んでて、正直あんまり好きじゃなかったんですよね
ただ今回読んだこの本はとても好きだった
尾崎世界観っていう世界観のなかの音楽がクリープハイプ の音楽だとしたら、その世界観の中の小説にあたるのがこの小説みたいな
音楽の世界観をそのまま小説に移植してきたような小説ですね
話としては、売れないバンドマンのバンド生活と風俗嬢との恋愛と悪夢とバイト生活と…っていうような主人公の生活についての話ですね
この本の主人公が嫌いなタイプとか苦手なタイプとかはとても共感できますね
口が巧いだけで偉そうな人とか自分自身に酔いすぎてる人とか他人の思いを想像せずに自由に振る舞う人とか
それにはとても共感できるけど、主人公とは仲良くなれる気はしないですね
たぶんエッセイがあんまりって思った原因でもあると思うんですけど
物事への受け取り方は近いものを感じるけど、そのことに対する行動が自分の外側に出過ぎてるところが共感しづらいんですね
だからフィクションとして一線を引いてくれている小説とか音楽は好きになれるのかなって
サンドイッチに指食い込ませるところとか楽器屋の店員蹴るところとかレンタルビデオをパッケージを抜き取るところとか読むのには最高だよなって思います
人として完全に倫理的なものは欠落してるけどそうしたい気持ちは理解できるし、これを読むのはスッキリするし
こういう粘着度の高いアンダーグラウンド的な世界観の小説は読んでて本当に心が安らかになるんですよね
綺麗事のなさすぎる世界は共感性も高くて
なんか読んでていろいろな嫌な思い出が想起されたけど過去の記憶とセットに本読んでる感じがしてより立体的に本が読める感覚抱かせてくれて
助けになるんよな
いつか『母影』も読んでみよ