活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】神の子どもたちはみな踊る/ 村上春樹

村上春樹さんの短編集

 

ここでは特に好きだった2つの話について紹介

 

『かえるくん、東京を救う』

銀行で働く片桐が家に帰ると、かえるくんがいた。かえるくんはとても大きいカエルで大きな地震を止めるために片桐と一緒にみみずくんを落ち着かせるように頼む。しかし片桐は計画当日拳銃で撃たれて…という話

 

『蜂蜜パイ』

淳平と小夜子と高槻は仲のいい3人組だった。小夜子と高槻は結婚し、やがて沙羅という娘も生まれたが、2人の仲は上手くいかず破局していた。淳平は小夜子に呼ばれ、眠れない沙羅のために蜂蜜を取るのが上手い熊のまさきちと鮭を取るのが上手いとんきちの話をして…という話

 

最近読んだ村上春樹さんの長編が2つ連続でそこまで好きになれなくてモヤモヤしてたんですけど

この小説はすごく楽しめた

特に『蜂蜜パイ』はこれまで読んだすべての短編のなかで1番好きかもしれんってくらい圧倒的に面白く読めた

短編でここまではっきり心に残る話もめずらしいなって思ったけど全員が全員楽しめるかっていうとそうでもないかも

とにかくとても自分好みの話だった

 

では具体的に良かったところを2つほど紹介

まず1つ目は

ファンタジーと辻褄合わせ

『かえるくん、東京を救う』の方なんですけど

正直今まで読んだ村上春樹さんの作品のあまり好きではない部分が詰め込まれていた話ではあった

でもこの話に関しては振り切ってて気持ち良かった

それがファンタジーなところと辻褄合わせみたいなところなんですね

地震が巨大みみずの仕業で巨大なかえるがそれを救うのも銀行の金庫の先にみみずがいるのもファンタジーすぎてわけわかんないけどそれをここまで現実感伴って書いてるのが面白かったし

最後片桐が撃たれた後の展開の辻褄合わせみたいなところも本来モヤモヤするようなところなはずなのになんか腑に落ちた

全てが片桐の妄想としても片付けられる話だし全てが比喩としても現実としてもちゃんと成り立ってるようなこの話の汎用性の高さにも惹かれたな

 

2つ目は、

事実が話に反映される展開

これは『蜂蜜パイ』の方で村上春樹さんの作品でここまではっきりハッピーエンドだと思える話も珍しい気がする

この話の中で熊のまさきちととんきちの話が出てきて

途中の話では

蜂蜜を取るのが上手い熊のまさきちと鮭を取るのが上手いとんきちの2人は親友でお互いに鮭と蜂蜜を交換した。だけど鮭が取れなくなりとんきちは山を下りることになって、そこで猟師に捕らえられ動物園に送られた

っていうことになっていて

淳平が小夜子や高槻に遠慮していて気を遣っていたこととか頼ることができなかった心情を映し出していた

 

でもそこから小夜子との関係が好転したことで最終的にとんきちが別の道を歩んだ結末に書き換えた

っていう流れがとても良かった

(説明下手だ…)

 

とにかく淳平と小夜子と高槻っていう3人の関係性が明確に振り分けられるわけでもなくまさきちととんきちの2人の関係性に比喩として投影されている話の構造が好きだったな

主人公が薄暗いけど前を向くことができるっていうのも良かった

 

『蜂蜜パイ』は何回か読み直したくなる話だったなー