芥川賞候補作
あらすじ
時代は戦時中。テーベという病に罹った幼馴染であり、妻である早季の看病をするために凛太は病院に通う。その病院には昔から早季や凛太のことを知っている浅野医師や患者である村田さんがいて彼らと交流するが、早季の病は少しずつ進行していって…という話
いやーやっぱり高橋弘希さんの作品好きだ
文章表現の綺麗さがすごく好み
たぶん全作家さんのなかで1番好み
一つひとつの表現に品があって繊細で
人間の根本に存在している優しさみたいなものが存分に書き表されてる感じがする
1つ目は早季という女性の魅力
この物語のなかで出てくる早季という女性の魅力がすごく伝わってくる
凛太とは幼馴染で小さい頃は無邪気なところもあったけど
夫婦となった今の様子は品があって
凛太に対して敬語で関係性がフェアだから敬語でも丁寧に接してる以上の意味はなくて
そして凛太とのやり取りの中で好意が爽やかに伝わってくるのがとても良い
人と人が支え合って生きていく関係性のなかで理想的な形である気がする
こんなに左手で触ってる本の薄さを気にしたことなかったって思うくらい
話を読み進めたくないって思いましたね
2つ目は死の不条理さ
死のペースの割合が不均等というかとても偏ってるのが死の不条理さを表しているようで悲しかったけど良い
この作品が病院を題材にしていて患者が死ぬことを中弛みしないように使うことって簡単だと思うんですけど
死を物語の転機として焦点を当てて書くわけではなくてただ一つの事実としてしか書かれていない特に凛太郎に関してはほとんど描かれることがなかったから中断された感覚になって
喪失感の余韻がしばらく残されましたね
高橋弘希さんの作品は改めて綺麗だと思い知らされた
テーマがどれだけ変わっても良さが変わらなくてすごい
あとはデビュー作と最新作を読まなきゃな