芥川賞候補作にもなった作品
あらすじ
サンドウィッチ屋を営む妻ががんになって入院している。快復の見込みがなく、衰弱していく妻を介護していくなかで妻との距離感を考えたり、妻の本当の気持ちを考えたり、死をどう捉えるのかについて考えたりしていくという話
語り手である夫が揺れている様子を通して描かれているからリアルに介護について考えさせられる
死を終わりとか向かうべきところとして強く意識するのではなくていつかの死までの日々を生きることに焦点を当てるっていうのが新しく感じましたね
特徴的で面白かったところという考えさせられるところが3つあって
1つ目は面会についてで
妻の母は家族以外の人との面会はストレスになるんじゃないかという考えであんまり会わせたくないみたいな気持ちがあるけど
やっぱり本人からしたら会いたいよなって
自分が変わってしまっていることとかどうでもよくなりそうだよなって
あと面会に来た人がショックを受けて泣くことに苛立つ気持ちもとてもリアルだなって思いますね
勝手に絶望に貶めてる感はあるよなって
2つ目は妻のなかでの夫と母の立ち位置についてで
この本は距離感について描かれているから
病院に泊まるのを妻が母に頼んでいるのは母との距離感の方が近く感じるんですけど
夫にも頼ってるところ考えると
妻のなかでは夫と母は立ち位置が違うように捉えているのかなって
人って距離感だけじゃ測れないところも多いのかなって本書を通してこそ考えますね
3つ目は死後の描写についてで
本書ほど死後のことも長く書かれているのはあんまり読んだことなかったのでその部分がまた新鮮でしたね
花が妻との距離感が遠いものを避けたがったり、
死化粧をあまりちゃんとしたくなかったり、
っていうのが生と死を地続きにしたい夫の思いが溢れていて
妻の本心自体はわからないから正解かどうかはわからないけど
そこまで色々と想像して考える人の優しさは伝わってくるなぁって思います
山崎ナオコーラさんらしいっていう印象はそれほど感じなかったのにとても面白かった