活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】臆病な都市/ 砂川文次

あらすじ

首都庁で働くKは文書管理を行う。周りから浮かないように文書を正しいところへ正しく送り届けることを徹底して人日々の業務を行っていたある日、ケリという鳥を原因とした感染症が流行り始める。研究所では感染症の存在など確認できないと言われつつも感染者は増えていき、住民たちから対策を講じろとの声が大きくなっていき…という話

 

自分が読んだ砂川文次さんの作品は芥川賞受賞作の『ブラックボックス』だけだったので2作品目

文学的な魅力が溢れるような書き方じゃないっていうと失礼なんですけど

語り口が堅い感じがする

その語り口が今回のテーマの公務員にはとても合ってるし、前回読んだ『ブラックボックス』でも上手く生かされていて

自分の文体の特徴を客観的に捉えられていてすごい

 

では良かったところを2つほど紹介

1つ目は

役人の立場の書き方

確か砂川文次さん自身が役所で働いた経験があるはず

だからこそ詳細に描かれる役人の精神がとてもリアルで面白かった

まず仕事は世の中のためになるから大事とかじゃなくて

物事を正確に伝えて伝え方を間違えないことが何よりも大事で揚げ足の取られないようにもしなければならない

っていうのが役人ならではの考え方で

一般企業で働く立場とは大きく違うんだな

って思った

 

市民に対しても何かをしていることを伝えることが大事というスタンスを取っていて

中身が何もなくてもそれっぽければ大丈夫

っていう考え方をしていて

改めて役所とかでは絶対働けんな

って思いましたね

読みながら虚無になりそうなほど社会の歯車感強かったなあ

 

2つ目は

自らが講じた策によって起こる悲劇

馬鹿馬鹿しいと思いながらも自分が何となく周りの目を窺いながら考えた対応策によって

自分や周りの人たちがその対策に苦しめられる展開が自業自得すぎて面白かったんですけど

ただめちゃくちゃ想像しやすかったせいで

さすがに怖かった

仕事舐めるもんじゃないなって思いましたね

会社とか勤め先を通すだけで自分の影響力って一気に大きくなるから気をつけないとな

って思います

 

やっぱり失礼だけどこの文体で色んな賞獲ったり候補作になったりって夢あるよな

って思います