あらすじ
有名な画家である雨田具彦の家に住むこととなった、画家の私は屋根裏に隠された騎士団長殺しという絵を見つける。さらに谷の向こうの家の住人である免色の肖像画を描く依頼を受けたり、夜中に鈴の音が聞こえて家の裏に大きな穴を見つけたりと非日常的なことが巻き起こっていく。そんなある日免色から1人の少女について絵を描くように頼まれて…という話
相変わらず物語を構成する要素がめちゃくちゃ多くてあらすじまとめれん
で、まあ面白いところも多かったんですけど
ちょっとなって思うところも多かったな
全体1100ページくらいで400ページ超えたあたりで急に秋川まりえは遅いやろって思ったし
人妻との不倫とユズとの離婚と穴…いるか?
って思ってしまったな
やっぱり『ノルウェイの森』好きすぎる分、長めの小説やと気になるところ出てくるなぁ
こういう小説ゆっくり読める心の余裕欲しいわ
では良かったところについて3つほど障害
まず1つ目は
騎士団長殺しという絵がもつ意味
騎士団長殺しは男が騎士団長を殺していて
それを女性と穴から顔を覗かせる顔ながが見つめる構図となっている
雨田具彦はこの絵を屋根裏に隠していて
騎士団長を殺害するという行為に留学中の後ろ暗い転機が秘められている
というのが良い
人生において重要だけど決して明るいものではないものを騎士団長殺しという美しくもあるが恐ろしくもある絵に仮託しているのが素敵
2つ目は白いスバルフォレスターの暗喩
これもまた暗喩なんですけど
主人公には女性の首を絞めたという暗い思い出がある
それと結びついてるのが白いスバルフォレスターの男で
主人公はその男の絵を描くんだけど途中で描くのをやめるしやめるのが正解だとわかる
ここでその男が表すものは
スティグマというか自身を闇に誘引する要素みたいなもので
その要素に向き合い続けることは正しいように思えるけど向き合い続けることは決していいことだとはいえない
っていうことを言ってるんだと思う
自分自身はどちらかといえば向き合い続けることが善だという考え方をしがちだから
そういう考え方もあるんやなって思ったって意味で面白かった
完成とかやり通すとかが負を帯びることもあるっているのがね
3つ目は免色の狂気性
物語の終盤で免色であり免色でない人物が出てくる
免色という人物が結局どういう人間であったかは最後までわからないけど
人の家を観察したり、元妻の服を大切にしまっていたり
深い愛情ゆえに大きく欠けた人物であるような気がして
愛情を突き詰めた先が狂気に近くなり
人を大きく変質させる力を持つ
っていうことが示されてるんだと思うんですね
完璧に近い免色だから愛情の狂気性が強調されていて面白かった
いやー読み終わるのに4ヶ月近くかかった
最後の方は面白かったからスラスラ読めたけど
村上春樹の長編はだいぶ間空けんとよめん