2022年上半期芥川賞候補作
あらすじ
高校生のまどかは生理が来ないように食事を制限していて同性のうみちゃんと付き合っている。まどかはうみちゃんにかけがえのない他人であることを求めているが、うみちゃんの方は違うのだということを同級生の翼沙との会話をキッカケに気づき…という話
近年の芥川賞候補作のなかでは全体的な文章量は短い方で
色んな出来事が起こって場面や心情が色々と変わっていくわけではないんですけど
一つひとつの文がとても丁寧に書かれていて
文体を工夫して書いているのがとても良かった
そしてまどかの心情や思いもちゃんと伝わってきてとても好き
では具体的に良かったところを2つほど紹介
まず1つ目は文体とまどかの心情の一致
まどかは既成の概念に分類されることを嫌っていて
自分が食事をあまり摂らないことの動機が生理が嫌なだけだから拒食症ではなくて
同性であるうみちゃんと付き合っているのはかけがえのない他人を求めているからLGBTQに含まれないと考えている
この考え方が文体に反映されているのがとても良い
全体的に出来るだけよく見る表現は使わずに自分なりの表現で文章を書いているのがすごい
書くの大変だっただろうなって思うけどすごく好き
2つ目はかけがえのない他人という考え方
自分たちにとって他の人では代替できない存在を求めるっていうと
性別の制限とか関係性の枠組みみたいなものは感じられなくて
純粋2人の人間が向き合っていたり、寄り添っていたりというイメージが湧く
一方で親友とか恋人とかっていう
既存の言葉を使うとどうしても直接的な人と人の関係性だけに目を向けられなくて
特定の行動をしなければならないような制限が伴ってしまう
まどかが求めるのは前者の関係性で
そこにLGBTとかの言葉はいらないっていうのが感覚としてとても納得ができる
多様性を受け入れることと多様な人を示す言葉を作るのって全く別の話なんだよな
って改めて思いましたね
情報化が進んで一つひとつの情報を選ぶことが主となっている現代社会ですけど
一人ひとりの感覚を受け入れるためには考えて想像しなくてはならなくて
一般的に正しいとされている受け入れ方は机上の空論のようなもの
形だけなものだよな
って考えさせられた
同調したくないね
色々