芥川賞候補作
あらすじ
ガールズバーの店員のような女を乗せたタクシーの運転手、ガールズバーか何かで働く女を接客するコンビニ店員、日雇いのバイトで食いつなぐ男など。様々な男の視点が切り替わり、やがて1人の女視点に変わる。女は美容室で見習いとして働いていたが、辞めることとなり…という話
雰囲気の暗さがとても好きだった
カツセマサヒコさんとか燃え殻さんとかの雰囲気もありつつも確実に純文学といえる作品で読んだことない感じで繰り返し読みたくなる
作品タイトルと話の距離感も絶妙でとても良かった
では具体的に良かったところを2つほど紹介
まず1つ目は
ビニール傘と都会の人間の重ね合わせ
もうこれまで読んだ本のなかで1番タイトルが絶妙かもしれんって思った
この話全体で固有名詞が出てこないから全員が匿名なんですね
だから誰が誰なのか分からなくて
似たような人物が本当に同じ人物なのか最後までわからない
それが都会の街の群衆を表してる
確かに人は多いけど人が多すぎて差異化できないから全員匿名で誰が誰かわからない感じがする
その感覚を書き方で表してるのがすごいし
そしてそれにビニール傘と名付けるのもすごい
ビニール傘って傘っていうこと以外に特徴がない傘で色んなところに置いてあるから
それが都会の人間みたいってことなんだろうと思う
一つひとつを区別することができないっていう意味と
白と黒だけだから鮮やかな印象がないっていう意味とかで
その名付け方がとにかく好き
2つ目は
美容師の夢が破れる流れの描写
後半1人の女の人に焦点が当たるんですけど
その人は田舎から大阪に出てきて美容師を志すんだけど
彼氏と美容室の人との浮気が原因で
美容師になることをやめて
とりあえずガールズバーで働き始める
っていうこの一連の流れ
って夢が破れる流れの中心を突いてる感じがして良かった
夢を見るために環境を変えるけど
直接夢とは関係ない環境を変えた副産物によって
夢を叶えることを諦めてしまう
っていう流れを書いてて良い
なんとなく苦しくなる感じはするけど
大事にしたい本に久しぶりに会えたかも
『背中の月』も良かったなぁ