活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】彼岸花が咲く島 / 李琴峰

2021年上半期芥川賞受賞作


話は、彼岸花が咲く島に少女が流れ着く。その島ではニホン語という言語が話されている一方で女性のみが喋ることのできる女語という言語もあった。さらに島の物事を決めるのはノロと言われる女性たちとそのリーダーの大ノロだった。少女は島で生きていくためにノロになろうとする…という話


いやー面白い

まず言語がニホン語と女語とひのもとことばの3種類があって

それが使い分けられてるっていうのが台湾出身で日本語の小説を書く筆者ならではの着眼点やなって思いますね

全体的にジブリ映画くらいのファンタジーな雰囲気があったのに話が進むと今の社会と全く別の世界の話でもなくて

っていうのが衝撃的で面白さが一気に強まったわ


面白い点を2つほど紹介

1つ目は、島の歴史と謎

それまで細田守監督の作品のような日常っぽさも強いファンタジーめな作品っていう印象だったのに

島の歴史で日本とか台湾とかいう言葉が急に出てきてそれらから独立しながらも貿易をしている島という存在が現実と地続きに描かれて

それまでの綺麗な印象だったものが暗さとか人の醜さを意図的に排除したものだったのかと考えると戦略的な描かれ方がしてるなって思いましたね


2つ目は、大ノロの宇美に対する態度

村の長である大ノロが初めは厳しく接してくることで威厳を目の当たりにするのに

話が進むにつれてだんだん人間味が見えてきて

それには宇美との共通点も関与していてっていう流れのグラデーションが丁寧に描かれていてちゃんと登場人物が立体感をもってる感があって良かった


全体的なことを言うと

ひのもとことばが全部ひらがななのは『abさんご』というトラウマを引き出されそうになったけどとても読みやすいひらがなで助かった

と、同時にひらがなだけで話通じるんじゃないかと思った

だから日本語を母国語としない人たち用に日本語の書き方を変えた日本語というものを作ると日本語ってもっとハードルの低いものになるんかなって考えましたね


1つだけ言うなら、この世界観で車あるの?っていうのはちょっと思ったんですけど

島の歴史とか辿るとそれも納得できるかなって感じですね


めずらしくファンタジーっぽい物語で楽しめた

あんまり他の本で似てる感じのもなくて面白かった