あらすじ
IT系の会社で働く薫には半同棲状態にある彼氏の郁也がいた。ある日郁也に喫茶店に呼び出されると郁也との子どもを身籠ったミナシロさんがいて、子どもをもらってほしいと頼まれる。薫は卵巣がんになって性行為が嫌になった自分と郁也の関係性を見つめ直すとともに昔飼っていた犬のように2人の子どもを愛せるか考えていく…という話
高瀬隼子さんの作品は芥川賞受賞作の『おいしいごはんが食べられますように』に続いて2作目
情景描写は必要最低限で簡単な台詞回しと心情の深掘りで作品を書いていく様がとても良く面白い
1番の魅力は常識的な感覚とのズレを容赦なく書くような書き方ですね
こういう小説を読みたいから読書続けている感じがある
では具体的に好きだったところを2つほど紹介
1つ目は、
子どもは猿みたいで気持ち悪いという感覚
これを書くところが高瀬隼子さんの魅力だと思う
日常会話のなかで子どもはかわいいと言わないといけない圧力が嫌いっていうのが伝わってきてすごく好き
全赤ちゃんの全瞬間かわいいっていうのは無理あるし
赤ちゃんを好きじゃない人だって当然いると思うからこれを書いてくれることで間口が広がる感ありますよね
これは赤ちゃん大事にしなきゃいけないとか言う話とは別の話でね
2つ目は、
病気と感情の関連のこと
本文中で明言されていたか忘れたんですけど
この話の主人公が卵巣がんで手術を経験しているっぽくて
その過去があるから性に関することに後ろ向きで
その結果恋人と性行為をしなくなったっていうのとても納得できる
絶対世の中にはそういう人一定数いるはずなのにあんまりそういう小説もないし話も聞かないのがねちょっと寂しい気持ちがあるんですよね
でも病気を契機として一般的にはポジティブな感情と結びつけられることをネガティブに捉える人の話を書いてくれるのがとても嬉しい
病気っていう偶発的な事象で物事に対する姿勢が180度変わることもあるし
自分にそういう経験があるから共感性高くて面白く感じた
高瀬隼子さんの作品は共感できると救われるし
共感できないと価値観を広げられる気がしますね
どちらでもちゃんと楽しめるな