三島由紀夫賞受賞作
あらすじ
好きでもない同級生の佐野と性行為をして自尊心の減った女子高生のアイコ。翌日クラスメイトに呼び出され、佐野が何者かに指を切断され、行方不明になっていることを知る。アイコの好きな金田と佐野を探し始めるが、街では中学生がアルマゲドンと言って暴れ回ったり、グルグル魔人という殺人鬼が子どもをバラバラにしたりしていて、アイコはそれらに巻き込まれながら頭が朦朧としていて…という話
舞城王太郎さんらしさ全開の作品で
文章のスピード感と内容のグロさとぶっ飛んだ構成でしたね
最初の一文から好き
ちょっと前の作品だから芸能人がいっぱい出てくるところで時代を感じたけど
後に芥川賞の選考会で舞城王太郎さんの作品を低評価してる石原慎太郎さんを先回りしてちょっとディスってるのが運命みたいでなんか面白かった
では良かったところを3つほど紹介
1つ目は主人公の頭の中の世界観
この話は途中から訳わかんなくなって
芸能人がいっぱい出てきたり
子どもたちが森に入ったら全員殺されてバラバラにされたり
ネタバレっぽくはなるんですけど
全部が頭の中の話で
頭の中の混乱をそのまま抽出して描いているのがすごい
ずっと混沌
2つ目は子どもを皆殺しにされた夫婦の行動
子どもを皆殺しにされた夫婦が公園で人目を憚らずに泣きながら抱き合っていた
っていう状況が心が身体に追いついていない感じがすごい
頭で理解ができていないから感性で行動していてそれが本能に基づくもので
その後の行動も併せて人間を未熟な生物として描いているのが好き
3つ目は阿修羅像を作り続けた人の話
阿修羅ガールというタイトルの回収がずっとされないまま話は進むんですけど
最後の方で阿修羅を作り続けた人の話が出てきて
もともと悪ガキだったけど仏像を作り始めて真人間になって
でも阿修羅像を作ることには妥協せずに作っては壊してを繰り返したという話に対して
アイコが私も頭の中で色んな人を殺したけど
それは自己を投影して自分を壊し続けることに意味があるんじゃないかと言っているんですね
ただこれが舞城王太郎さんの作品の魅力だと思うんですけど
アイコが壊したいと思っているほど追い詰められているような様子は見られなくて
そこを想像するのが楽しい
舞城王太郎さんの作品全部読みたいな