文藝賞受賞作
あらすじ
男子小学生の晴男は同じクラスの痩せ細った女の子井内とともに山の奥深くの小屋にたどり着く。そこでは青田は人形を人間の妻としていて暮らしていた。やがて担任の西山は青田の大学時代の友人であったこともわかり、物語は次第に山の昔話とも繋がってきて…という話
同じ年の文藝賞受賞者の山下紘加さんが注目されてるし題材も派手ではなさそうだったから正直あんまり期待してなかったんですけど
とても面白かった
村上春樹さんっぽさもある気がする
では具体的に良かったところを3つほど紹介
1つ目は、土地に降り積もる繰り返される歴史
この話の主題とも言える狂愛についてで
ロシアからやってきたウォロンツォーフとその妻の清子の話
青田と里佳子との話
そして晴男と井内のそれぞれの恋愛が重ねられていて
一方に異常が起こってもう一方が狂う
っていう共通の関係性があって
歴史は繰り返されるっていうのがとてもわかりやすく書かれている
だけどこのそれぞれの関係性については似通ったりはしてなくてちゃんとそれぞれの関係性が丁寧に描かれていて良い
人々がある程度の幅はありながらも根本的には変わらないっていうのが小説で示されてるの面白かったな
2つ目は、電波と愛情
ラジオがキャッチするはずのない電波をキャッチする
それを聴こえたといってるのが
土地そのものに根差してる霊的な何かの作用なのかはわからないんですけど
とても恐ろしい力によって大事な人が変わっていってしまう喪失感が死よりも割り切れないもので苦しい
好きな人には共感したくなるものだと思うのだけど共感し難かったり共感してはならなかったりするときの感情って難しいよなあ
3つ目は、虫に食われる病
何かの比喩なのかと思ったけどいまいち消化し切れてない
身体の内側にあるものが肉体としての身体を蝕んでいくという現象は
当人にとっては自身の
晴男などにとっては好きな人の
身体の体積が物理的に減っていくことだから
目に見える形でのわかりやすい絶望ではあると思う
火を用いることで虫を退治するのも示唆的で面白かったんだけど
この辺りのことを納得するには自分に思想が足りてないなあ
とにかく畠山丑雄さんには興味湧いたなあ
そのうち何かの賞にノミネートされないかなあ