芥川賞受賞作
あらすじ
息子の希敏と里帰りをした主人公は、9年前の海外旅行のときにお世話になったみっちゃん姉の息子が病気で入院していることを知り、お見舞いに行くことにする。お見舞いの日、縁起の良い貝殻を拾いに行くために9年前の旅行を思い出しながら息子を連れて母の生まれた島を訪れて…という話
色んな作品名を見て勝手に小野正嗣さんの話読みやすいと思ってたんですけど
久しぶりに捉えどころが難しい芥川賞作品を読んだ
文章自体は読みやすいんだけど展開とか行動とかの意味を考えると途端に難しくなる
掴めてる感があまりない小説でしたね
そんな感じでも良かったと感じたところを2つほど
まず1つ目は
引きちぎられたミミズという表現の仕方
直接的に希敏が障がいがあるとは書かれてないんですけど多分そういうことで
自分の子どもがそういう性質をもった母親視点で子どものことを引きちぎられたミミズって言っていて
しかも話で一貫してその表現以外の表現を使っていないっていうのが
文章を通して筆者の表現力を示そうとしてるんじゃなくて母親の余裕のなさを表現しているようで良かった
やっぱり人の心にできるだけ寄り添う小説は良いですね
2つ目は9年前の海外旅行との照らし合わせ
現在の主人公の状況が9年前の海外旅行で知り合った夫と別れ、子どもに手を焼いている状況だけど
当時は夫は優しい人物で頼もしい存在として描かれていたり
当時お世話になったみっちゃん姉が
現在では息子が病気にかかっている状況であったり
全体の状況が9年間の隔たりを経て変わっている様子がとても良い
完全に9年前と違うわけではなくて
教会での祈りとか点と点は繋がっているように描かれているのも良いですね
正直途中希敏とはぐれるあたりが
ちょっとわからなくなったんですけど
障がいのある子どもをもつ親の葛藤が繊細に描かれていて面白かったですね