三島由紀夫賞受賞作
あらすじ
主人公の二朗の家庭には素性のわからない「伯爵夫人」が同居していた。伯爵夫人は祖父と血縁関係があるという噂や高等娼婦であったという噂があったが、真相はわからなかった。ある日、ホテルから出てきた伯爵夫人に会い、1日を過ごすことになり、ホテルに行くが、そこで伯爵夫人の過去や変貌を知ることとなり…という話
最近大正から昭和にかけての話を読んでなかったんですけど
この話はそのくらいの時代の文学を思い出させてくれる少し難しい文体の印象
内容は女性の婀娜っぽさがテーマらしいけど
品があるようで品がないような性の話
途中までとてもしょうもない下ネタの連続みたいな印象を受けた
最後まで読んだら色々考えさせられることはあったんですけどね
では良かったところを2つほど紹介
1つ目は伯爵夫人の過去
本書で伯爵夫人という人物は艶かしい人物として描かれていて
男性から見た理想的な女性の象徴のような人物
そんな伯爵夫人が昔に知り合ったキャサリンという人物がいて
その人物は娼婦という立場を利用して復讐をしようとしていて
伯爵夫人もそれに似た過去を抱えているっていう辺りが面白かった
正直伯爵夫人の人間的な魅力はそこまでわからなかったけど
高麗という男性やその高麗が憎んでた男性たちと伯爵夫人の関係性がすべて男女を前提として成立しているような関係性になっていて
その関係性に人間関係の泥臭さみたいなものを感じられて楽しめた
また戦争における男女の役割みたいなものを象徴的に描いているようでもあって読んでて爽やかな気持ちになることは決してないけど
戦争というものが地に足ついたものとして考えられるような感覚があった
2つ目は存在を知られていない茶室
二朗が伯爵夫人から話を聞く場所が裏社会で使われるような茶室となっている
そこは伯爵夫人が以前から通っていた場所だが
どこでもない場所で
そこで伯爵夫人が二朗に打ち明ける話が伯爵夫人の心の底に根付いているような話
っていうのが
伯爵夫人の妖艶なミステリアスさと相対する人間味を他には見せずに二朗にだけ打ち明けていることを演出しているみたいで綺麗だった
読みにくくて途中まであまり楽しめなくて
でも読むのやめなくてよかった
後半ちゃんと面白くなる小説は良いな