あらすじ
女子高生の百音は4人組のグループで日菜子さまを中心としたグループに所属していて、
家では家族を顧みない父と弟の中学受験で手一杯の母と無邪気さを失った弟の3人がいる。
百音は自殺募集の掲示板を見ていて、自殺志願者を3人集めて会うこととなり…という話
これまで柳美里さんの作品は『JR上野駅公園口』しか読んでなくて難しいイメージがあったから本作を読んでびっくりした
とても読みやすくてわかりやすかった
多少外側から見た若さを書いているみたいなのは感じたけど、主人公の立場や年齢に合った文体で書いてて好きだった
では具体的に良かったところを3つほど
まず1つ目は、入り組んだ話の構成
『JR上野駅公園口』でもこの構成に近い構成だったと思うんですけど
本作は電車内の人々の会話や自殺掲示板、友人や家族とのやりとり、メールなどの媒体の異なる文章をそのまま使って構成されていて
その構成はもちろん恣意的なものなんだけど、
現実の出来事をそのまま映し出したような印象を与えてくれる
この構成がとても誠実さを感じて好き
2つ目は、主人公の自殺との距離感
本作中では主人公の百音が自身の感情を深掘りするような独白はない
だから百音と自殺の距離感が掴みにくくて
急に百音が自殺に惹かれているような印象を受ける
でも百音の状況を考えると絶望的な状況ではあって
一人の人生を客観的に見ることからその人の心情を考えさせているのがとても良い
書きすぎないバランス感がとても上手い
3つ目はともに自殺をしようとする人たちの人間性
百音が募集をかけて集まった4人の性格や状況のバラバラさが良い
特に主婦の人が百音に若いからまだやり直せるっていう態度なのが良かった
自殺することを考える人に若いからまだやり直せるとか両親からもらった身体だから大事にすべきとか言う人本当に信じらんない
その考え方ある人は若いうちに自殺なんか考えねえよって思うわ
でもそういう人も自殺しようとしているっていうのが
死への願望っていうものの原因が多様で
人の根源的な欲望に近い距離にあるものなのかもしれないなって思うな
わかりやすく全員似たような状況にしてないのが筆者がそういうことを考えていたのかなって思いますね
柳美里さんの作品の書き方好きだな
芥川賞受賞作も読もうかな