芥川賞候補作
あらすじ
よしひろ、トリキ、鈴木、マーヤは映画を撮るために4人で車に乗って鳥取砂丘へ向けて出発する。道中でトリキの家で失踪した弟の話を聞いたり、大阪でよしひろの友人に会ったりしながら、4人は時間や記憶について考え、終焉を迎える地球の映画を撮るために鳥取砂丘へ近づいていく…という話
島口大樹さんは前から気になっていて
今年24歳という若さですでに3冊も小説作品が出版されているんですけど
それも納得の作品でしたね
話の内容が哲学的で少し難しいところもあるんですけど大体は読みやすくて面白かったですね
では具体的に良かったところを3つほど
まず1つ目は未来と過去の捉え方
これがこの話の主題の1つだと思うんですけど
未来は点線で書かれて過去は実線で書かれることが多いけど未来こそ1つだから実線で書くべきで過去は忘れていくから点線で書くべきだっていう考え方について登場人物が回想していく様子が面白い
時間軸っていうテーマに対して色んな考え方が示されているのが哲学っぽいなって思いますね
記憶は不確かなもので記録に残す
でも終末だったら記録も不確かで
みたいな関係性の思考も面白い
2つ目は終末の世界について
終末は人が操作できないからって言って
カメラの撮り方を人の意思に委ねないっていう考え方はとても共感できる
やっぱ終末の世界で色々人によって成り立っていると
小説で考え方と生い立ちがどうしても合ってないように思えるときに感じる違和感に近い違和感を持ってしまうのでそれをなくす発想は自分自身の感覚にとても近くて好き
あと記録は記憶よりも確かなもののような捉えられ方をしがちだけど
終末に至ってはどちらも頼りないもので
それでも記録をしていればいつかの誰かに届くんじゃないかと逡巡している感覚も良かった
3つ目は今は会えなくなった人について
ここが個人的に1番好きだったところなんですけど
マーヤが昔少しだけ関わりのあった女の子が
機能を失ったものたちの流れ着く海辺に魅了されていたり、
トリキの失踪した弟が詳細な街の模型を作っていたり、
それぞれの人物の内面が表れているエピソードが良い
もう会えないことを予感させるけど確実に会えないわけではない人物と哀愁漂う雰囲気がマッチしていますね
よく分からないけどなんか良いっていう塩梅のエピソードが好き
島口大樹さんはこれからもっと面白い話を書いていくんだろうなっていうのが予想がつく
末永く色んな話を読んでみたいな