沖縄での戦争の後を描いた芥川賞受賞作
あらすじ
ある朝目覚めると右足が膨れて水が出ており、動けなくなっていた。物質的にも普通の水と変わらないその水は夜中になると軍人のような格好をした人々が飲みに来た。その軍人たちは皆見覚えのある顔だった。さらにその水を飲むと人々は若返り…という話
堅い話かと思ったけどファンタジーもあって読みやすかった
併録されている『風音』も沖縄での戦争の後の話でこれまでに沖縄戦について書かれている小説を読んだことがなかったけど沖縄戦について考えるきっかけを得られて良かった
では、面白いところを3つほど紹介
まず1つ目は戦争を生き抜いた主人公のその後の人生と後ろめたさについて
主人公は戦争を生き抜いたことで地元の子どもたちに戦争についての話をする活動をしている
でも多くの人が亡くなった戦争について話して
報酬を受け取る行為に後ろめたさを感じてもいて
それが夜中の出来事によって想起されている様子が良い
確かに戦争での出来事を語ることは大事だけど
生きて残った人にしかそれは出来なくてっていう葛藤はありそう
2つ目は水を飲みに来たかつての戦友との戦争中での出来事
水を飲みにくる描写が最初にあって
それが戦争中にともに戦った人々だったっていうのがわかった後に
水について戦争でやり取りしていたっていうことが書かれている構成が好きすぎる
戦争での回想で出てくる内容も切なくて
訴求力みたいなものがとても大きい
3つ目は水の効果
水について若返りの効果があるのが生命力の表れ?だと思うんですけど
水が最終的にファンタジーで空想のものであったようになる展開も含めてとても流れが綺麗
ちゃんとオチがついてるのがこういうタイプの小説だと珍しいと思うんですけど
色々と構成考えられている感あって好き
色んな人からの視点で沖縄のある兵士についての後ろめたさとかについて描かれている『風音』もめちゃくちゃ良かったから色んな人に読んでほしいんだけど
たぶん絶版なんよなぁ