活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】我が友、スミス/ 石田夏穂

芥川賞候補作

 

あらすじ

会社員として働くU野は、Gジムで身体を鍛えていた。ある日、U野はO島に声をかけられてNジムに移籍し、ボディビル大会に出場することを目指すこととなる。そしてT井やE藤などのトレーナーに支えながら身体やパフォーマンスを磨き、U野は大会に出場する。しかしそこでU野は…という話

 

内容はすべて筋トレに関するものとなっているんですけど

魅力が詰まった作品だった

すばる文学賞の佳作なのに芥川賞の候補作になったっていうのがわかる気がする

新人賞向きというより芥川賞向きな感じとかが

著者はジムに通っていくなかで書いたらしいけどその経験を存分に利用して書いているんだろうなって伝わる

 

では具体的に良かったところを3つほど

まず1つ目は語り口

これがこの作品というか石田夏穂さんの作品の魅力だと思う

比喩表現みたいものがずっと特徴的で

三人組を親の仇のように睨んだ、とか

いつ買ったのか神のみぞ知るTシャツ、とか

これは代表的なものではなくてたまたま開いてたページに書いてあっただけなんですけど

この書き方が全体を通して貫かれているから

読んでて全く飽きがこないし

筋トレの専門的な知識のところでもスラスラと読んでいける

この書き方が筆者の特徴だとしたら

今後筆者の作品が面白くないことはないような気がしますね

 

2つ目は筋トレの描写

これがとにかく凄い

具体的なマシン名やトレーニングメニューがすべて細かく書かれているのに加えて

負荷をかけすぎると違う筋肉が鍛えられて体の影響がこのように出るっていう

筋トレした上での体の変化までが細かく描かれていて

この作品のみずみずしさが伝わってきた

これほど明るい生命力を感じる純文学作品は珍しいと思いますね

 

3つ目は主人公の信念

主人公の願いは

「別の生き物になりたい」

ということ

この願いというか信念みたいなものが貫徹されることで結末を迎える

という構成がとても美しい

本の帯にも大きく書かれていて

ちゃんと一番書かれるべき文言が帯に書かれているのも含めてよかった

 

とても面白く読めた

石田夏穂さん追わないとなって思う