芥川賞候補作
『天空の絵描きたち』も併録
幼な子の聖戦のあらすじ
村議の主人公は市長候補になった同級生の応援をすると誓う。しかしそこで隣の市長に弱みを握られたことで選挙妨害を命じられる。良心の呵責に苛まれながら主人公は様々な選挙妨害をしていくが…という話
天空の絵描きたちのあらすじ
高層ビルの窓掃除として働く主人公は同じ会社で働く人たちとともに窓掃除の鍛錬を積む。ロープやゴンドラを使った窓掃除を日常的に行うなかで、既婚者の権田に憧れを抱き、飲みに行く距離感になったが…という話
いやー面白かった
『天空の絵描きたち』は古市憲寿さんの『百の夜は跳ねて』という作品の参考文献として挙げられていて
盗作された話ではないかみたいなことにもなったことがあったみたいなんですけど
少し気持ちはわかるかなって思いましたね
『天空の絵描きたち』がとても誠実に書かれているだけに『百の夜は跳ねて』の印象は悪くなったのかなって思いました
ただとにかくこの『天空の絵描きたち』はとても面白かった
これが芥川賞候補作になることがないだけでなく書籍化されることもなく日の目を見ないまま埋もれそうになっていたことが信じられない
ほんとに面白かった
では具体的に面白かった点を2つの作品で
それぞれ1つずつ紹介
1つ目は、選挙妨害の馬鹿馬鹿しさと良心の呵責
これは『幼な子の聖戦』の方でみんなで候補者として推した人を落とそうとしてる構図がまず馬鹿っぽいんですけど
さらに妨害の仕方がSNSであることないこと書いたり、同級生を脅したり、老人を買収っぽいことしようとしたり
ほんとにめちゃくちゃなことしてるんですけど
そこに主人公の良心の呵責がどんどん押し迫っていく展開がとても良い
人間味感じる
あと始まり方とかの構成も好き
2つ目は、窓拭きの専門性とそこで生まれる豊かな人間関係
これは『天空の絵描きたち』の方なんですけど
窓拭きの用語とか手順とかポイントとかの書く量がまずエグい
詳細なこととか初心者がつまづくところとか熟練者の特徴とかとにかくすごい
そしてそれに伴う肉体労働特有のノリみたいなところもとてもリアル
主人公がちょっと男社会の感じが強いところにいて
そこでチャラめだけどリーダー気質がある人とか主婦で頭良い感じがなくても親しみやすい人とかとにかく優しくて頼りになる人とか色んな人に囲まれてる状況が丁寧に書かれてるからまあ楽しい
本書の2作品でも振り幅がすごくて
木村友祐さんの作品は総じて評価高いみたいなんで色々読みたい作家さんがまた1人増えたなって思いますね