ホームレスの人々の生活を描いた作品
あらすじ
河川敷で飼い猫のムスビと暮らす柳さんはその河川敷の古株で缶を拾って売ったり、仲間と談笑したり、魚を捕らえたりして過ごしている
ある日もともと記者として柳さんを取材していた木下が家を失って河川敷にやってきて以来、ホームレスの数は増えていき、その一方で周囲の街からは排除される風潮が強まり…という話
木村友祐さんの小説を読むのは2冊目なんですけど
何となくどういう作風なのか何となくはわかるようになってきましたね
社会的にはあまり上ではない人たちが懸命に生きる姿と人間愛を感じる作風なのかな
参考文献も多くて1つの作品にかける熱量の高さを感じますね
では具体的に良かったところを3つほど紹介
まず1つ目はホームレスの日常の描写
これがすごい
実際に筆者がホームレスだったんじゃないかくらい詳細に書かれていますね
朝は日が昇る前から換金できる缶を集める様子が書かれているんですけど
移動手段が修理した自転車で
換金してくれる缶は一部だから種類は分けて
袋を破いて中身を漁るとその辺りの住人から苦情がくるから袋は破かずに中身を取り出して
っていう描写でとてつもなくリアルに描かれているということはわかると思うんですけど
それが1日の過ごし方だったり、持ち物だったりっていうホームレスの生活について全部詳しく描かれていてすごい
ちゃんと読者がホームレスに感情移入できる書き方をしてるのがすごいなって思います
2つ目は登場人物たちの優しさ
主人公の柳さんがネコを育てている描写とか
木下が国籍とか性別とかに区別せずに支えていこうとしている姿勢とか
この話に出てくる登場人物たちは生物に対してすごく純粋な善意を持っていて
それが綺麗だから良かったというより
人生で上手くいかなくてホームレスになって
自尊心が高いわけではない状況にいる登場人物だからこそ
人々に善意を与えることができるというのが納得できてよかった
3つ目は街から疎外されていくホームレスの様子
新しくなっていく街ができていくのと対照的にホームレスを野良人呼ばわりするようになって
缶を集めることもできないどころか川に住むことも危うくなっていくのが
高級住宅街の排他的な感じと高級志向の人たちの冷たさを表していて好き
温かな日常を醸し出す住宅街っていうのが好きじゃない身からしたらそれを書いてくれているのが嬉しくなる
自分の価値を物理的にひけらかそうとすると
ある意味では浮いていて
周りを抑えつける方向性に力が働く
っていうのがよく表されていると思いますね
木村友祐さんの作品は主人公に入り込んで書かれていて
しかも主人公が特殊な状況下にいることが多いから
読んでいて新しい経験をした気持ちになる
色んな話を書いていってほしいですね