芥川賞候補作
あらすじ
会員制のホテル"オテル モル"で働き始めた希里。オテル モルは日の入りにオープンして日の出に終わるというシステムで、睡眠を求めているお客さんに快眠を届けるためだけに作られたホテルだった。そこに薬物中毒などのせいで入院していた沙衣を連れてこようとして…という話
あらすじなんか上手く書けんかったけど面白かった
栗田有起さんの作品の雰囲気の軽さとその軽さとはかけ離れた暗さみたいなもののバランスがとても好き
では面白かったところを3つほど
まず1つ目は西山さんと沙衣の娘の美亜と希里との3人暮らしのバランス
もともと希里と西山さんが付き合っていて家に呼んだのに
そこで沙衣と関係をもったことで生まれた娘である美亜と元恋人の西山さんとの3人暮らしとかいう地獄の暮らしなのにその地獄さをあんまり感じさせないけど
確かにその過去が反映されているところが節々に感じられるのがすごく良い
2つ目はオテル モルの仕組み
オテル モルのホテルとしての世界観がすごい
まず出入り口が大通りから見えづらくなっていて地下の深くに部屋があって
フロアが通気口で繋がっていてお互いに作用し合う
っていうのが
眠りっていう生物の根源的な欲求を追求するホテルだから人としてというよりも生物としての特性を引き出す設計になっているようで
その世界側の作り込みが好き
3つ目は希里の沙衣を想う気持ち
希里は西山さんと美亜から距離を一定に保とうとしていて
両親が希里じゃなくて沙衣を愛していることに嫉妬している面がありつつも
切実に沙衣のことを祈っているところがあって
その塩梅も不自然ではない気がして
その人としての価値観がしっかりと描かれているのが素敵
栗田有起さんの本は読みやすい文体と暗い過去が特徴なんですかね
クセになる
芥川賞候補作になっていたのがもう一冊あったはずだ
買わなきゃ