芥川賞受賞作
あらすじ
とある場所に塾があった。その塾を経営している主人公は変な話をしたり、変な教え方をしたりという様子だったが、そこに男がやってきた。男は主人公のズボンを下げ、舐め回したり、夜になると元気になって出かけていったりした。ある日、その男は昔折田さんの知り合いでどこかに失踪したイイヌマさんではないかという話になり…という話
異類婚姻譚的な昔話みたいな話で
読みやすい文体とキャッチーな雰囲気でとても面白かった
示唆的なところも多くて不思議な気持ちにはなる
併録されていて芥川賞の候補作にもなった『ペルソナ』も面白かった
では面白かったところを2つほど紹介
1つ目は犬婿入りという昔話
昔姫が排泄をすると姫に支えていたお手伝いさんが尻を犬に舐めさせていて
その犬が人になって現れてみたいな犬婿入りというおとぎ話のような話が語られて
その印象的な話の後にイイヌマさんがやってきて犬婿入りの話に準えるように話が進んでいくのが面白い
2つ目はイイヌマという男の犬っぽさ
主人公の尻を舐め回すとか夜になると元気になって出かけていくっていう犬を擬人化させてその特徴を反映させているのが少し馬鹿馬鹿しくて好き
しかも必要以上に周りの人たちがイイヌマさんの変なところに突っ込まないことで普通の人間の範疇に収まるようになっているから
過去の話とかも受け入れやすくて良い
異質なものを違和感があるけど異常とまではいかないくらいで書くのはこういう話だと大事なんだなって思いますね
ただこの話、結末で急に突き放される感じがして
それまでの話の進み方がわかりやすかった分
最後にえ、ってなって終わってしまったんですよね
なんかしっくりくる解釈がありそうなのにそれを掴めないのが悔しい
これまた多和田葉子さんの他の作品を読んでからだと解釈しやすくなるんかな?