文藝賞受賞作
あらすじ
被災地で個人商店を営む毅と母。数少ない客には常連で高い頻度で利用してくれている老婦人の風峰さんや、小さい頃からの友達である武田がいる。そんな日々のなか金を返すと電話をしてくるのに一向に金を返さない古木という男の存在に母が疲弊していき…という話
こんなこと言うのあれだけど最初の30ページくらいは退屈に感じてしまって読むのをやめようかと思ったんですけど
結局最後まで読んだら色々としっくりきて面白く感じましたね
ちょっと不思議
では具体的に良かったところを2つほど紹介
まず1つ目は惰性の書き方
これが最初退屈に感じた理由でもあるんですけど
はんぷくするものというタイトルにもあるように物語は日常が繰り返されていくのが大半を占めているから大きな展開があまりなくて戸惑う
なんですけど読んでいくうちに反復する日々の中で母が弱っていったり、風峰さんが来なくなったりというような些末なことが大きなエネルギーを持って迫ってくるので
日常の範疇を出ない展開なのに楽しめる
2つ目はそれぞれの人物が示唆するもの
これがこの小説の魅力ですね
武田は毅を心配して商品を持ってくるけどそれは万引きされたもの
っていうのが
関わって疲弊してしまったり、悪影響が出たりする友人で
風峰さんは商店で買った商品を口にしているなかで体調不良になってしまう
っていうのが
自分がいつの間にか害してしまっている弱い存在で
古木は借金返さないやつでダメ男だけど必要悪の側面もあってみたいな存在
っていう風にそれぞれの立ち位置がわかりやすくて面白かったですね
読むのやめなくてよかった