活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】短篇五芒星/ 舞城王太郎

5つの話からなる短編集

芥川賞候補作

 

舞城王太郎さんの作品は1つひとつの主題がとてもわかりやすくて読みやすくて

何を書いてあるかはすぐに理解できるのにその主題をどう考えるのが良いのかは全くわからない

その感覚が心地良い

 

ここでは

流産について考えることをやめられなくなる

『美しい馬の地』と

動物の死骸を纏って悪い箱を退治する

『あうだうだう』

についての感想を書く

 

では良かったところを2つほど

まず1つ目は場違いな善意

美しい馬の地』では、主人公の子どもがいない独身の男性が流産について許せなくなっている

それは本人からしたら少なくとも悪意はなくて

自分でもわからないうちに取り憑かれるような善意なんですけど

そのことで彼女と別れたり、実際に子どもを失った人に怒られたりする

っていうことが起こって

色々と考えさせられる

 

例えば、今戦争について嘆いて

日本で涙を流しながら戦死者を追悼したり、

戦争に興味を持たない人間を怒ったりしたとすると

きっと実際に戦争で亡くなった家族を持つ人は全員が全員良い気持ちになることはない

 

その原因は物事に興味を持つってことは

その物事に好奇心が働いていて

無意識のうちにその物事を娯楽として消化しているっていう側面があるからなのかなと思う

無関心は駄目だけど過剰な関心も駄目

その不思議さを考えさせられる

 

2つ目は、他人が嫌がる汚れ仕事

『あうだうだう』では、

自分が好きな動物をたくさん殺して

その死骸を身に纏って、あうだうだうを退治するという女の子が出てくる

とてもファンタジーな世界ではあるんだけど

その女の子は

自分の好きなものを犠牲にして世界を良い方向性に導く人

の比喩だと思う

 

具体的にこういう仕事のことだっていうのは難しいけど

例えば食肉を作る過程に携わっている人で言うと

自身が命を奪う段階を担っていて

多くの食肉を提供しているって考えられる

そう考えると『あうだうだう』を退治しているのと重ねられるところもある

 

仕事に残酷さが付きものであることはこの世の中にあって

自覚できなくてもその人たちのおかげで残酷さを感じなくていいように生きることができている

っていうことを忘れてはならない気がした

 

舞城王太郎さんの作品から受け取ることができるものはとても多いな