芥川賞受賞作
話は、
各国の言語で小説を書いては世界中を飛び回る友幸友幸という小説家をエイブラムスが大規模に探し回る…という話なんだと思う
この小説は石原慎太郎さんが芥川賞の選考委員をやめるきっかけにもなった小説で
こんなのが芥川賞受賞するなんておかしいみたいな感じだったらしくて
その話を聞いたときは子どもみたいだなって思ったんですけどいざ読んでみると自分的にはその意見に賛成かなって思いましたね
どちらかといえば
この本の技巧的な素晴らしい点は
時系列と言語と人の境目なく書くことで小説全体が螺旋構造のようになっていて奥行きがとても感じられる点と
着想を思いつくことを具現化して表現していたり、言語を知らないのに翻訳してしまったりしている点があると思うんですね
ただ正直その発想の元だと何書いてもよっぽど空気を壊すことを書かない限りこの小説のもつ空気感が変わらない気がして
文学の繊細な表現が好きな自分には合わなかったなって
あと小説の内容が特定の場所だったり、人だったりじゃないと楽しむことのできない本があれば面白いってことを言ってて
この本自体もそういうところがあるんですけど
それがある程度勉強した人じゃなければ本当の意味で楽しめないっていう感じになってるのは冷たくて嫌でしたね
ただ個人的には併録されている
『松ノ木の記』の方は好きだったんですよね
こっちが芥川賞なら納得したのに…って思ったなぁ
これはまず1人の作家が1つの本を翻訳して、それをまたもう1人の作家が翻訳して、さらにそれをまた元の人が翻訳してっていうことをしていた2人の作家がいて、
そのうちの1人がもう1人の人に会いに行くと相手は男の人だったはずなのに女の人しかいなくて小説の舞台を案内される話なんですけど
こっちは本当に面白く読めた
特に自分には父親は1人で祖父は2人いてさらにその上には4人の曽祖父がいて…ってなると過去に戻ると人は増えるはずなのに実際は少なくなっているみたいな話は言われて初めて考えましたね
いやー意見の部分が多いから
好き嫌いは分かれるよなぁって
でも芥川賞受賞もわかるにはわかるんよなぁ