芥川賞受賞作
あらすじ
久しぶりにフランスを訪れた主人公がかつての友人であるヤンが住む住居を訪れ、そこでさまざまな話をする。ヤンはすぐに旅に出なくてはならなかったため、主人公は一人でヤンの家に数日滞在することになったが、そこで家主の女性と盲目の息子と食事をする機会に恵まれると言う話
面白かったのに捉えどころがあまりなくて
印象が薄いのに何故か胸に残り続ける作品だった
あらすじ書いたけど物語の主軸を捉えきれてない感がすごい
ちょっと置いてまた読み返したい本ですね
では具体的に面白いところを3つほど
1つ目は微妙な人間関係のズレ
ヤンと主人公が仲良いことは伝わってくるのに物語の後半のところで
主人公がヤンとの関係性がお互いを傷つけ合う関係性だと考える場面があって
確かにヤンとの話で一枚の写真がユダヤの話に繋がっていたり、ヤンと上手くスケジュールが合わなかったりということは言われてみたらあるんですけど
それを傷つけ合いと捉えるのは大袈裟な気がしてしまう
それほど繊細なズレについて書かれた本をこれまで読んだことないのでこの本の着眼点がなんだか不思議でとても尊いものを感じましたね
2つ目は軽快なフレンチジョーク
本作は冗談とか軽口をたたくところがあって
特にお気に入りなのは美しい景色を見たときに
カマンベールチーズを投げたいくらいだっていうところで
実際のフランスの雰囲気がどうなのかはあまりわからないですけど
そのラフさがネイティブっぽさを感じさせてくれて
フランス人の感性の一部に触れた気がして面白かった
3つ目は熊と敷石に込められた意味
この本は熊の上を歩く夢から始まって、石切工場で敷石という言葉が出てきて
タイトルの意味ってなんだろうって思っていたんですけど以下の引用が全てだと思いますね
忠実な蠅追いは敷石をひとつ掴むと、それを思い切り投げつける。(本書104ページ)
これに象徴された熊と人間の話をモチーフとして語られた話なんだと思うととてもスッキリ
蠅を殺すために熊が敷石を投げる所想像したらめちゃくちゃシュールで面白い
この本、正直終わりはとても中途半端な場面で終わるんですよね
それが自分が捉えきれていない要素があるからだと思うんですよね
それが悔しい
読み直したい
でも一読するだけでも十分に楽しめる