本屋大賞にもノミネートされたミステリー作品
あらすじ
フリーの記者の太刀洗はネパールに滞在していた。そんなある日王族が大量に殺害されるという事態が起こり、町は混乱状態に陥る。太刀洗はその真相を探るために動き始め、王族の警備をしていた男に取材をすることを許されたが、明くる日その男の死体が目の前に現れる。その死体にはinformerという文字が刻まれていて…という話
めちゃくちゃ面白かった
あらすじでは王族の事件の真相を追う感じに書かれていたことが多くてちょっと規模大きすぎて苦手かもなって思ってたら
男の殺人事件の比重大きくてわかりやすかったし
最後の読後感の悪さがとても自分好みでしたね
では、具体的に面白かったところを3つほど紹介
まず1つ目はネパールという国の土地性を存分に含んだ背景
本作では僧が出てきたり、貧しい子どもが出てきたり、大きいところでいうと王族が国のトップであったりということを踏まえて描かれていることが多くておそらくネパールという国でないと辻褄が合わないとのろが多いと思うんですけど
そのあたりが惜しみなく書かれているので
他の作品では読んだことないようなことが事件の背景になっていて
ネパールというか他の国のことを考えるきっかけになりますね
書くの大変だっただろうなぁ
2つ目は記者や報道のあり方についての言及
太刀洗が何のために記者という仕事をするのかということを考える場面が何回かあって
記者が報道したことによっての波及効果を持ち上げられて非難されるところとかもあるのに太刀洗は記者であり続けようとする、
その信念を読むことで報道について考えさせられる
ハゲタカと少女の写真の例が挙げられているところがあるんですけど
あの写真がきっかけで貧困について考えさせられる人は確かに多いだろうけど
その結果あの写真が正解だとは言い切れない
でも写真を撮った人を非難していた人たちの中でその身を現地まで運んでいる人はあまりいないだろうということを考えると…
とか色々考えてしまいますね
3つ目はネパールの子どもたちの心に寄り添った裏の真相
この話の事件の真相は一回表の推理?というか綺麗な推理で明かされて
それでも納得できたんですけど
その後の裏の推理で読後の後味悪さが一気に溢れ出てくる
でも自分がボランティアという概念が嫌いなのと同種のところから発した訴えを感じて
満足感は高くなった
大どんでん返しを描けるのはさすが一流の作家さんだなぁって思いますね
あらすじだけだと惹かれなかったのに
実際に読むとここまで面白いって思うのは稀有でしたね
良い読書した感じが味わえた