2021年に出版された作品
あらすじ
山から子どもの白骨化された遺体が発見された。遺体が発見された場所は<ミライの学校>と呼ばれる団体が校舎を建てていた場所だった。子ども時代に<ミライの学校>で楽しい夏休みを過ごしていた記憶のある弁護士の法子は、遺体が誰のものなのか、自分の知っている子なのかを探っていく…という話
いやー『朝が来る』と同じく主人公嫌いだわーって思いますね
正義感が強いけど傲慢な部分のある大人が苦手なんでね
好きになれる主人公が出てくる話こそいい話だなんて微塵も思わないんでどうでもいいと言えばどうでもいいんですけどね
話自体とても面白いし
この本の構成は現在、弁護士として働いている法子の視点と子ども時代に<ミライの学校>で過ごしていたノリコの視点が入り組んだものになっていて
読んでいるうちに子ども時代にどういうことが起こったのかっていうのが気になってどんどん読み進めてしまった
大どんでん返しとか伏線回収とかがあるわけではないけれど、それでも物語の展開はちゃんとしてて、琥珀の夏という意味もちゃんとわかって
そういう部分でスッキリしたり、楽しめたりした
面白い点を2つほど挙げるとしたら
1つ目は、宗教団体のように扱われている<ミライの学校>についての内部とも外部とも言えないような立場の主人公の視点で書かれていることで実情と世間体の差異をわかりやすく書いているところ
怪しい団体に所属していたというほどではないものの関係していた人の立場で話が書かれて
なおかつそれが過度にマイナスだったりプラスだったりで書かれるのではなくて実情をそのままエピソードとして語られるように書かれた話というのが新鮮な気がしましたね
さらに子ども時代に内部にいて、それから数十年の時を経て改めて外部から見つめ直すことで浮き彫りになることがあるっていうのも良いですね
2つ目は事件の真相の心理描写が一連の流れに基づいて描かれているところ
ミステリーをあんまり読まないのは事件についね焦点が当てられすぎて人の心理描写が省かれることがあるからなんですけど
この話の真相は加害者?も被害者も両方の行動が環境を考えるととても自然でどちらの心の動き方も理解できるし、納得できる描かれ方をしてると思いますね
事件の前、事件そのもの、事件の後の人々の動き方と数十年発見されなかった白骨化した遺体というのが矛盾なく違和感すらなく描かれているのはさすがだよなぁって思いますね
個人的に本全体で描かれていることで好きな価値観というか考え方みたいなのがあって
それは
人は過去を美化するし、自分を納得させるために他人を悲劇の中心に落とし込んで考えようとする
みたいな考え方で
自分が昔仲の良かった友人をそのままの形で残しておきたくて死んでいたら良いと心で願ってるというようなことが書かれてるのが
はっとさせられるものがあるなって思いましたね
ミステリーめちゃくちゃ読んでる人からしたら物足りなさがあるのかもしれないけれど
辻村深月さんの作品が好きな人は好きだろうなって思ったな