三島由紀夫賞受賞作
あらすじ
ニュータウンに住む、目立つタイプではない小学5年生の結佳。彼女は同じ書道教室に通う同級生の伊吹をおもちゃとして扱おうとする。初潮が訪れて性について考え始める小学5年生の頃の結佳と、クラスでヒエラルキーがはっきりとついた中学2年生の結佳の視点から見たニュータウンの街や変わらない伊吹との関係性の変化について描かれた話
村田沙耶香さんの本はほぼ読んでいて
とても好きなんですけどこの本も良かった
性に関することをどストレートに書く村田沙耶香さんの作品なんですけど
本作はそこまで性について強く描かれている印象はない
っていうと嘘かもですけど
でも伊吹との複雑な関係性とか周りの女友達の微妙な関係性とかについて描かれている比重が大きい印象でしたね
では具体的に面白かったところを2つほど
1つ目は伊吹を支配する結佳の心情
伊吹はヤンチャな男の子っていう感じで
最初は性についての知識も全くないことを結佳が見下して支配しようとするんですけど
中学生になって伊吹のヒエラルキーが高くなってしまうとその関係性が拗れてしまっている状態になって
複雑な心情を抱える結佳のことをめちゃくちゃ細かく描いていて良い
伊吹が結佳に見下しているのはお前の方だろっていうところはめっちゃ共感
自分を下に下げることで勝手に上の立場にしている人物を疎外することのタチの悪さについて言及してくれていて良かった
2つ目は成長期とニュータウン
これがこの本の文学的な素晴らしさだと思うんですけど
自分が成長することで伸びていく自分の骨と白一色で構成されたニュータウンの発展がなぞらえて描かれているのが綺麗
途中で発展が止まるところも最後にまた発展が始まるところも
結佳の成長過程とリンクしていて好き
こういう美しい小説はやっぱ読んでて心地良い
物語の面白さと文学的な素晴らしさが併存する本でしたね
こういう本が賞を取って評価されるのは嬉しい
村田沙耶香さんはあと2冊でコンプリートだ