大江健三郎賞受賞作で、世界でもベストセラー
あらすじ
主人公は掏摸を生業としている。過去に木崎という男の強盗計画に参加して以来、彼に掏摸の手解きをした石川という男は消え、一人で過ごしていた。そんなある日スーパーで万引きをする母子に出会い、彼は母親と肉体的に、子と精神的に繋がる。そのとき街中で木崎と再会してしまい、彼は3つの依頼を受けることになり…という話
中村文則さんの作品は10作品くらい読んできたんですけどこの作品が代表作と言われるのがわかった
退廃的な雰囲気が漂い続けて、切なさもすごいけどめちゃくちゃ面白かった
具体的に面白かったところを3つほど紹介
1つ目は主人公と子どもの正しくはないが、強固なつながり
主人公は子どもに万引きの仕方を教えてあげるんだけど最終的にはお金渡して万引きをしないように言っていて
それに母親に子どもは巻き込むなって何度も言ってるのが
人間の根源的な温かさを感じる
自分みたいになってほしくない主人公の心情が強く出てますね
2つ目は木崎という絶対的な存在
本作で出てくる裏社会の人間である木崎は出会うだけで絶望を感じさせるほど恐ろしい存在として描かれていて
途中の王様と青年の説話が木崎と主人公に準えていて
その救いようのなさみたいなものを絶妙に表現していますね
すべてがバレていてすべてが操られている怖さがひしひしと伝わってくる
3つ目は掏摸という犯罪を通した心の締め付けられ方
掏摸というと重大な犯罪というわけではないけど確実に意図的に法を犯している行為でそのことによって主人公の心が疲弊しているのが伝わる
身に覚えのない財布を持っているのはそれだけ強いストレスを伴っているからなのかなって考えると
そういう生き方しかできない主人公の境遇の辛さを考えてしまう
いけないことではあるけどいけないと綺麗事では言えない感じですね
とても面白かった
続編?みたいな存在である『王国』も読んでみないと