文藝賞受賞作
あらすじ
主人公は地味な男子中学生でクラスでいじめられている。ある日落ちていた人形を持ち帰ったことをきっかけとして主人公は人形に対する性衝動を自覚し、ラブドールを購入する。主人公はラブドールにユリカと名づけ、本物の女性のように少しずつ関係性を築こうとしていく。姉が帰ってきたことをきっかけにユリカを隠さなければならなくなり、やがて持ち運んでいるときに長谷川にラブドールの存在がバレてしまい…という話
めちゃくちゃ面白かった
山下紘加さんの作品は『クロス』『エラー』と読んできたんですけど
今作が1番好き
面白い点を2つほど
まず1つ目は何と言っても少年の異常性の膨らみ
初め主人公はラブドールに愛情を向けるだけだったのに
そのラブドールに依存し、その高貴さみたいなものに惹かれていくことで
生身の人間への悪意に歯止めが効かなくなってきて
長谷川という自分より下の立場の存在を作り出したり、コンドームで女子に嫌がらせをしたり
っていう風になっていて
さらに長谷川の行動によって
さらに暴力性みたいなものが爆発してしまって
という展開が漸次的に進んでいくのがとても心地いい
好き
2つ目はユリカとの関係性
主人公がユリカに対して人間のように接していく様子がとても細かく描かれているのが面白い
性的な目的のために作られたものなのに
人間として接するということが逆に異常性を増しているんですけど
自分の世界に入り込むとこういう他の人との差異みたいなものに気がつかない感じはめちゃくちゃわかる
主人公がいじめられたり、クラスから浮いたりっていう状況じゃないとこのユリカへの関係性の築き方っていうのはありえないだろうから
そのあたりもしっかり矛盾なく描かれているのが良い
いやーめちゃくちゃ面白かった
『あくてえ』も読まなきゃ