活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】石を黙らせて / 李龍徳

野間文学新人賞受賞者の最新作


あらすじ

主人公は、高校生の頃同級生に唆されて見知らぬ女性に強姦をした。事件から10年以上が経ち、主人公は婚約者にその事実を告げる。主人公は、事件の内容と自らの贖罪を綴ったブログを公開することを決め、あらかじめ共犯者や家族にその決意を打ち明けていく…という話


いやーどう転んでもスッキリしないテーマですね

読後感爽やかなこと不可能

この話筆者の意図によって好き嫌いがだいぶ変わるとは思うのであんまり筆者の解説見たくないですね

怖くて

まあどうであれたぶん終わり方に納得できないのは仕方ないテーマだなって思いますね


最初恋人に強姦したことのある過去を打ち明けるところから入って

共犯の友人、家族、主犯の現政治家、職場の女性と話は流れていく

徐々に主人公の生活が次第に壊れていく様子が描かれていて

話の流れ方みたいなのはとてもわかりやすくて読みやすいですね

面白いって言っていいかどうかも迷うけどまあ面白いのかなって

深く考え過ぎるとちょっと暗い気持ちになりそうですけど


この本で描かれている特徴的なことは

罪に対する人々の価値観ですね

強姦をした人3人の現在が

罪をずっと抱え続けて自分の人生を壊そうとしている人、

家庭を築いて子どもを可愛がっている人、

政治家になって権力をもっている人

という3パターンになっていて

主人公1人だけが過去に苦しみ続けていて

あとの2人は過去のことだと言って気にしていなくて

罪と罰の関係性について考えさせられますね

主人公が正しいかというと当然そういうわけではないだろうし

あとの2人は確実に間違ってる気がしてもどうすればいいのかの代替案については考えられないし

難しい問題ですね


強姦って加害者の一時の快楽のために被害者に一生残る傷を与える罪で

それを考えると加害者は一生苦しむべきだと思うけどそれで十分という感覚にはならないし

本書のように加害者の存在のせいで周りの人達に2次被害が及ぶのも腑に落ちないし

何を考えても答えが出ない

加害者が石を黙らせようとする行為を通してそんなことをずっと考えさせられる


強姦の加害者の視点で描かれる話は初めて読んだけど改めて色々と考えさせられましたね