芥川賞受賞作
話は、母親が中国に行くことになって一人で日本に残ることになった20歳の知寿が、2匹の猫の住む吟子さんというおばあさんの家に居候することになって、そこでコンパニオンや駅の売店でバイトをしながら過ごしていくという話
作品名を見て、あらすじを読んで、あんまり面白くなさそうやけど芥川賞受賞作やし読むかって思ったら
めっちゃ好きやった
文章自体は読みやすいのに書かれている方向性がとてもはっきりしていて全体的な雰囲気も気だるさのようなもので覆われていて
いやーよかった
この本が書いているのが一時的な人との関わり合いについてで
始めは母親と地元の彼とが中心だった知寿の人間関係が吟子さんという赤の他人だった人が中心になって、駅で出会った藤田君とかイトちゃんといった人たちが加わって
やがてその人たちとの人間関係も過ぎ去っていく構成が
この本の象徴的なものである電車が駅に止まっては通過していく様子と一致していて
いやー良かった
めちゃくちゃ綺麗だった
主人公が知り合った人のものを少しずつコレクションしていくというあまり良くない趣味も過去への依存を表現するのにとても合っているし
それを最後にまあ、あれするのも自立していく様子を書いているし
あと過去の人となった人の現れ出る頻度も本当に程よくて
そのバランス感覚がとても良い
おばあさんとの二人暮らしとなるとどうしても漫然化してしまいそうなのにそれを気怠さでカバーしたり、ちょっとした日常の波を加えたりすることで平板な印象でもなくなるし
いやーすごい
純文学系の小説で面白いと思ったのは色々あったけどここまで小説の構成能力みたいなものに魅力されたのは初めてかもなっていうくらい良かったですね
読んでよかった