あらすじ
久しぶりにできた恋人と同棲を始めることになった主人公。住む所を決めるときから恋人の嫌なところが目につき、いざ同棲し始めても嫌なところは目につき続ける。主人公はそんな恋人に我慢ならなくなってきて…という話
私小説なんで主人公のモデルは筆者だと思うんですけど
やっぱり本当に人間的に無理
こんなのが近くにおったらめっちゃ嫌なのに本の中の主人公となると読めるのが不思議だね
面白かったところを2つほど
まず1つ目はやっぱり書き方
昭和時代に活躍した作家さんたちへのリスペクトがある筆者っていうこともあって
普段なかなか使わないような熟語が多用されていることで小説全体の重厚感が増していて
作品の雰囲気が渋くなっていますね
古風な雰囲気が好きな人にとっては楽しいよなって思います
2つ目は自己中心的すぎるクズ
これが西村賢太さんの作品の醍醐味だと思うんですけど
キレるタイミングも理由も暴力的になるのも怖すぎる
トイレの鍵を閉め忘れて開けられたり、街中で喧嘩売った時に近くにいてくれなかったり
っていうだけでめちゃくちゃ不機嫌になって
手も出してくるっていうのがヤバすぎる
マジで近くにいたくないって思うんだけど
物語としてはおもしろいんですよね
同棲することで他人の嫌なところが見え始めるっていうことを西村賢太さんらしさで包装しているような作品で
怖いけど面白かった
西村賢太さんにしか描けないものって多かったよなって改めて思いましたね