2021年に映画化もされた作品
あらすじ
たとえという変わった名前のクラスメイトを好きになった愛。ある日彼が手紙を読んでいるところを目撃し、その手紙を盗み見る。その手紙はたとえの恋人の美雪からたとえ宛てに書かれたものだった。そして愛は美雪に近づいていき…という話
綿矢りささんの作品8割くらい読んでるんですけど、1番好きかもしれん
っていうくらい面白かった
あらすじだけ読むと高校生の恋愛小説って感じではあるんだけど内実は思春期の複雑な感情が細かく描かれていて
共感できる行動よりも直感的には共感できない行動の方が多いのにその行動が全く理解できないわけではないっていう絶妙なバランスで描かれているのがとても良かった
この本で特に好きな場面というか、行動?というかが2つほどあって
1つ目は、愛が美雪と肉体的な関係を持とうとするところで
最初はただ近づいて美雪とたとえの関係性を壊そうとしているように思えたのに
美雪を友人として大切にし始めて、美雪を助けるために口づけをするあたりから少しずつ美雪の側にいる理由が変わっていって
それが美雪自身に対する興味になっているように捉えられるところが
他では読んだことないような内容だけど
愛の行動もわかる気がして複雑な人間関係の一部を垣間見る感覚に陥ることができて
とても好き
2つ目は、愛がたとえを学校に呼び出す場面で
愛の心の状態が不安定でよくわからない方向に向かっているのがわかる場面だと思って
たとえと物理的な距離が最も近くなる場面なのに精神的な距離は最もかけ離れている場面っていうのが現実の残酷さみたいなものを表している気がして良い
そしてたとえがあまり人間性を見せる場面っていうのがそれまでになかったからよりここの場面での彼の人間性がはっきりとわかって
綺麗な言葉で彩られないたとえの言葉がとても好き
この話の魅力はやっぱり愛の心の動き方の緻密さにあると思って
1人の人間、特に思春期の女子高校生っていう心の動きが激しい時期の人物に焦点を当てて書くことができること、
そして筆者自身が20代の後半の時期にこれほど瑞々しい空気感で描くことができるのはすごすぎて不思議だなぁ
いやーすごい