芥川賞候補作
あらすじ
持病を治療する手術で力と整った顔を手に入れたマッサージ師の金子堅三が、マッサージの客として出会った脚本家兼俳優の先生に弟子入りし、映画の撮影に向かう。映画にはアイドルのいしかわ海や小関という大御所俳優が主演で先生たちは脇役で出演する。先生たちは小関がNGを出す回数を賭けて賭博に興じていくという話
純文学と大衆文学の間みたいな小説
物語の進む方向性が無理に定まっていない感じは純文学っぽいけどポップな感じは大衆文学っぽいですね
この話の面白さを2つほど
まず1つ目は主人公のキャラの強さとそれに反する透明性
主人公は力が人並み外れたマッサージ師から俳優の先生の弟子になるという濃いキャラなのに全体的に本人の心情みたいなものは薄くて
それが作品全体が出来事中心でポップな印象を抱かせていますね
登場人物を話のなかに取り込ませるのは好き嫌いが分かれると思うんですけど
今作くらい意図的になされていたら楽しめるなって思いますね
2つ目は海の人間性
この話のなかで海という人物の魅力みたいなものがとても良い味をだしていて
アイドルだけどタバコを隠れて吸って
小関を誘惑するけど性根が腐ってる感じではないキャラが
作品全体の爽やかさに繋がっていて
こういう魅力的なキャラが雰囲気が軽めの作品を面白く感じさせるのには重要なんだろうなって
人間性がちゃんと描かれてるから
作品がただ笑わせようとしてるだけにならなくて
飽きずに読めるんだろうなって思いますね
松尾スズキさんの作品は喜劇を小説に詰め込んだような世界観ですね
読んでいきたいな