あらすじ
災害の影響で一時的に避難し、母とともに街に戻ってきた小学生の恭子。つながりや絆の大切さを謳う海塚の町で日常の生活を送るが、周りはどの家庭も貧乏になり、母の仕事も不規則になっている。またクラスの同級生が突然亡くなったり、クラスの担任がいなくなったりして…という話
やっぱり吉村萬壱さんの作品は好感がもてるなって思いますね
この作品全体を通しては絆とかつながりとかっていうことを強制するような風潮の違和感だったり、都合の悪いことは隠そうとする人の醜さだったりということが書かれていて
とても正直に書かれている印象ですね
この作品のどこが好きっていうとちょっと難しいんですけど
ただ震災を意識して描かれた話で震災中の描写がほとんどなくて震災後の話だけに焦点を当てて書かれているのは筆者があまり外側から震災を見た立場として中途半端に内部の人間として書きたくなかったのかなっていう思いを感じて
それがその通りならやっぱり芯をもっている方だなって思いますね
内容自体については、
人が亡くなったり、担任が消えたりという描写が淡々と書き進められている印象を受けて
それらが日常に染み込んでいる感じを醸し出していますね
仰々しく書かないところが良い
そして何より終盤の展開は衝撃的だし、面白い
何一つ解決することなく主人公が日常から突き放される
そして醜い人間の行動についての感情を爆発させているのが読んでいてとても心地良い
そしてタイトルのボラード病っていうのが
自分達を正常に保つために、都合の悪い人を病気ということにするというような内容で
人間の根源的なところだよなって思わせられますね
奴隷制が長い時間続いていたこととか、最近は病気の名称が増えていることとか
そういう事実に対する皮肉を込めてこのタイトルにしているのは良いって言うと変なんだけど自分は好き
吉村萬壱さんの作品は一つひとつの話が異彩を放っていますね
色々読んでみたい