話は、小説で新人賞を取って専業作家になったもののヒット作を生み出すことができずに苦しんでいる主人公が妻と息子との3人で暮らしている。ある日買い物先であった妻と主人公の共通の友人は美しい身体つきをしていて主人公は冴えない妻よりも心を惹かれる。そんなときに小説の種になるならと落ちていた薬を飲んだ主人公は10年前にタイムスリップしていた。妻と付き合わずに、妻の友人と親しくなる道を選んでいき…という話
「ハリガネムシ」を読んでこの人の本絶対他のも面白いって思って読んだんですけどめちゃくちゃ面白かった
タイムスリップの話ってやっぱりちょっと無理があるところもあると思うんですけど
違和感を抱くことがほぼなく読めて
現実的に描かれていてとても良かった
具体的には急に十年前に飛ばされたから自分が今何の仕事をしているのかもわかってなくて上手くいったはずの仕事が上手くいかなくなっていたり
賞を取るはずだった自分の話もおおよその内容しか覚えてないから書くことができなかったり
っていうのがとてもリアルで好き
そして何度タイムスリップを繰り返しても乱数のようにランダムに起こる事象は操作できないから良いとこどりをするどころか1回前のタイムスリップのときよりも悪くなっていく状況を止めることもできなくて
だんだん元の生活よりはるかに遠くの生活に馴染んでしまって
退廃的になって
どう足掻いても元に戻ることができなくなって
っていう感じが吉村萬壱さん特異的なところなのかなって思いますね
少しずつ崩れる様子が怖いけどそれが無理のない自然な形で描かれていく様子が癖になりますね
吉村萬壱さんの作品でしか感じることのできない感覚みたいなものがある気がするんですよね
ちょっとずつ読んでいこうかな